番外編

□5年の想い
1ページ/1ページ






(七瀬ちゃん、
今日、どこか行くの?)




西「あ、はい
仕事でアメリカに行った人が
こっちに帰ってくるので
そのお迎えに」




(もしかして、
前に結構来てくれてた
スーツの人?)




西「はい…///」




(フフッ、恋人?)




西「っ!///」




(早く行ってあげなきゃね
今日は上がっていいよ)




西「ありがとう、ございます///」



店長に
早く上げてもらった


今日はまいやんが帰ってくる日


付き合い始めたあの日から
ニューヨークに行くまでの
2週間、二人の時間を
たくさん過ごした



通っていた中学にも行ったし、
社長さんのお店も行ったし、
行きつけのお店も、
夜景が綺麗なところも
それに、
子供に戻ったみたいに
遊園地にも行った


とても濃い2週間だった



だからこそ、
そのあとは
とても寂しかった


それが今となっては
懐かしい思い出だ



ななが
ここまで待ってられたのは
まいやんが
あの時あんなことを
言ってくれたから










白『七瀬、
ここまで来てくれてありがと』




西「ううん、
ななが来たかったから」




白『そっか…』



搭乗口の近くで
まいやんとななはお別れ


前日、まいやんの家に
お泊まりに行き、
2人仲良く寝坊したから
空港に着いたのは
予定よりも少し遅れた


もう時間が無いのに、
ななたちは
どちらも動こうとはしなかった



西「まいやん、じかっ…」




白『七瀬、』



もう、時間やで
って言おうとした時、
彼女に引き寄せられ
視界が真っ暗になった


彼女に抱きしめられたのだと
気づいた時には
目頭が熱くなり、
まいやんの服を
濡らしていた



白『寂しいよ
七瀬とやっと付き合えたのに
そばにいられないのが』




西「ななも…」




白『ごめんね、』




西「まいやんの、
せいやないから…」




白『うん…』




西「なな、は…
大丈夫やから…
頑張って、きて…」




白『うん、頑張るよ』




西「ななも、頑張るから…」




白『うん』




西「もう、泣かへんから
大丈夫やで」



彼女から無理やり離れて
涙を拭った


その姿を見せても
彼女の顔は不安そうだった



白『七瀬、
私がこっちに戻ってきたら
一緒に暮らそう
離れてた分、一緒にいたい』




西「ええの…?」




白『七瀬がいいって言うなら
ずっと一緒にいたいから』




西「うんっ…!」




白『フフッ、帰ってきた時の楽しみ
増えたね』




西「せやな、」



一緒に住もうなんて
言われると思ってなかった


ななはこの一言で
まいやんを待ってられる
そんな自信がついた



(12時30分発、アメリカ行き、○○便…)




白『あ、
もう行かなきゃ』




西「バイバイ、やな…」




白『七瀬』




西「ん?」




白『好きだよ』




西「ななも、ンッ」




白『必ず、帰ってくるから』




西「うん…」




白『じゃあね』



そう言って、まいやんは
スーツケースを引いて
一度も振り返ることなく
行ってしまった



前までは
その後ろ姿に涙していた


でも、今は
悲しいし寂しいけど
涙は流れない


お互い成長したんや


まいやんが見えなくなって
ななも空港を後にした











1ヵ月ぶりの同じ空港


同じ場所で
彼女のことを
今か今かと待っている



橋『なぁちゃん』




西「ななみん、飛鳥」




飛『久しぶり』




西「フフッ、せやなぁ」



お見送りの日、
来れなかった2人が
やってきた



橋『もうそろそろかな』




飛『これで、奈々未も
心配しなくて済むね』




橋『別に心配なんかしてません』




飛『嘘つけ
仕事、しーさんなら
どうしてたかなとか
最近仕事つまんないとか
言ってたくせに』




橋『仕事つまらないのは
いつもそうです
早く飛鳥迎えに行きたいもん』




飛『あっそ』




西「フフッ、」



仲良い2人を見るのは好き


でも、2人に会うと
まいやんに会いたくなる


他愛もない話を
したいって思うのは
まいやんだけやから



橋『にしても、遅れてるのかな?』




飛『予定より遅いね』




橋『飛行機から降りれなかったりして』




飛『そんなことある?』




橋『あの人の場合、そんなこと
普通にありえそうだからね』



2人は
そんなこと言ってるけど
ななは心配でしか無かった



『必ず帰ってくるから』



信じてる
でも、不安やった


全く会えなかった、5年間


会いたくても会えなかった
とても、辛かったから


あの時の日々が
またやって来たらどうしよう
って



橋『なぁちゃん、大丈夫だよ』



悲しい表情が出ていたのか
ななみんが
優しく頭を撫でながら
そう言ってくれた



西「ありがと…」




橋『おっ、と…』



ななみんの手が
ななの頭から離れた



『Please don't touch my girlfriend.
(私の彼女に触らないでください)』



聞きなれた声で
でも、聞きなれた言葉ではない



橋『はぁ…
From coming late.
(来るの遅いから)』




『フフッ、Sorry.』



そこにいたのは、



西「まい、やん…」




白『ただいま、七瀬』



髪色が変わっていたまいやんが
そこにいた



白『おいで、』



腕を引かれて
彼女の胸へと収まった


あっちで買った
香水でもつけてるんかな


まいやんの匂いではない


でも、
温もりは変わらない


行ってしまう時と
全く一緒やった



白『2人も来てくれたんだ』




橋『お見送り出来なかったけどね』




白『飛鳥ちゃんもありがとう』




飛『いえ…』



ななのことを
抱きしめたまま
2人と会話をしてるまいやん


ななにも構ってほしくて
背中に回した腕に
ぎゅっと力を入れる



白『フフッ、
もう離れないから
大丈夫だよ』




西「ん…」




白『帰ろっか』




橋『送るよ』




白『いいの?』




橋『どーせそれ目当てでしょ』




白『バレた?(笑)』




橋『早く行くよ
あんたの仕事
私が引き受けてんだから』




白『手伝うよ
明日から』




橋『はいはい、どーも』




白『七瀬、いこ』




西「うん…」



彼女から離れれば
視界が明るくなる


ななみんと飛鳥は
もう先に歩いて
行ってしまっている



ななも2人のあとを
追うように歩こうとしたが
腕を引っ張られ
目の前にはまいやんがいた



西「どーしたん?
もう行っちゃうで?」




白『まだ聞いてない』




西「え?」




白『七瀬の、「おかえり」が
聴きたい』




西「フフッ、
おかえり、まいやん
ずっと待ってたで」




白『ただいま、
私もずっと会いたかった』



そう言って、
だんだんと近づいてきた


そして、
触れるだけのキスをしてきた


でも、
会えなかった分の
長いキスやった



橋『しーちゃん、行くよ』




白『また、後でね』



ななみんに呼ばれて
離れたななたち


ななの頬に残った
涙のあとを
親指で拭って
手を繋いで2人の元へ向かった

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ