中編

□愛することとは
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白「なーなみ」




ある屋上のドアを開けば
開いた本を顔に乗せて
横になって寝ている人に
声をかける

私が声をかけても起きないけど

近くまで寄って
顔に乗っている
難しそうな本を退かす

本気で寝ているのだろうか
目を閉じたままだ



バレなきゃいいよね



私はそっと顔を近づける








奈『ばか』
ペシッ!




白「いったぁー!!!
顔を叩くか!?」




奈『なんであんたと私が
出来てる感じの話で
始まるんだよ』




白「いいじゃんか!たまには!
だってこいつ、私たちのこと
全然書かないんだもん!」




作(え、私…?)




奈『嫌だよ、
しーちゃんとキスなんて』




白「じゃ、ななみんは
いるんですか、
チューしたい人は」




奈『いないけど』




白「じゃ、私でいいじゃん」




奈『じゃあってなんだよ』




白「私と、ななみんの
友情の形❤」




奈『うるさい』




本の角で頭を殴られた




白「いったぁー…
その本、鉄で出来てんじゃないの」




奈『多分ね』




白「あ、体育やってんじゃん」




奈『なぁーちゃんのクラスじゃない?』




白「ってことは
あんたのクラスか」




奈『うん、まぁ』




白「体育くらいちゃんとでなよ」




奈『まぁ、どうにかなるでしょ』




白「どうにかなったら
私だってそうしてるよ」




奈『しーちゃん
運動できても
頭が馬鹿だからね』




白「馬鹿ですけど何かー
あ、なぁーちゃんだ
おーーーい!!」




奈『あ、ばか…』




なぁーちゃんを見つけて
上から見えるように
大きく手を振る
すぐに気づいてくれて
恥ずかしそうに
手を振り返してくれる



奈『しーちゃん、
先生にバレるよ』




白「あ」




なんて気づいた時には遅くて
体育の先生がこっちを見ていた




(白石ぃー!!!
お前、授業中になにしてんだよ!)




白「先生、ごめーーーん!!」




って、謝って
ななみんの横に倒れる




白「アハハハッ!
今日も説教コースかなぁ」




奈『また、なぁーちゃんのこと
待たせるんじゃん』




白「それまで
ななみん一緒にいてあげて」




奈『なぁーちゃんじゃなかったら
私待ってないからね』




白「エヘヘヘッ、
私んとこの彼女
可愛いからねぇ」




奈『はいはい…』










授業をサボっていれば
しーちゃんがやってきた
私が教室にいないと思えば
ここに来ると分かっているのだろう

雨の日でもここで
過ごしているほどだから



天気の良い今日は
行かなければ損をすると
思って一限から
ずっとここにいた




白『ななみんさ
進路どうするの』




奈「もうそんな話してんの」




白『みんな考えてるよ』




奈「青春してないね」




白『でも、いいとこ行きたければ
今からじゃないと間に合わないよね』




奈「私は、就職できればいい
もう、親に負担をかけたくないし」




白『じゃ、一人暮らしするんだ』




奈「うん、こっちでね」




白『私はどうしよ〜』



隣で悩んでいるしーちゃんを
見れば奥に誰かが見える



奈「ねぇ、しーちゃん
あれって」




白『ん?』




私が指さした方向には
本校舎の屋上に
柵を乗り越えて
立っている女子生徒がいた




奈「しーちゃん!
そこで見張っといて!
私行ってくる!!」




白『あ、うん


でも、見張ってて
どう伝えたらいいのよ』





私はひたすら走った
体育でもこんな全力疾走
したことないくらい


本校舎では
授業をやっているけど
そんなの気にしない



(授業中だぞ!!)



教室の前を走りすぎれば
そう言って顔を出す先生もいた



そんなのにいちいち答えてられない
なんでこう私立は建物が広いんだよ
息切れしちゃうよ



本校舎の屋上のドアを開ければ
誰もいなかった
周りを探すと一番奥に
あの子がいた




奈「ねぇ!!」




私が声をかければ
彼女は体をビクッとさせて
こちらを恐る恐る見た




奈「そんなことするなよ!」




『そんな、こと…?』




奈「マジで、うごかないで…」




『え…?』




奈「だから!動くなって…」




『う、ん…』




私も柵を乗り越えて
一歩一歩彼女に近づく
高所恐怖症でもないのに
これは足が竦むよ
めっちゃ怖い



奈「よしっ、捕まえた」




『なに…?』




奈「なにじゃないよ
あんた何しようとしてたの」




柵をまた乗り越えて
安全な場所に移動する
私はひと安心して
腰が抜けてしまった




『ただ…眺めてただけだよ…?』




奈「…っ///」




死ぬ気がなかった彼女
私の勝手な思い込みだった
そう思うと一気に顔が熱くなる




『フフッ、だっさー!』




奈「はぁ!?
こっちは心配して
全力で走ってきたんだよ!?
なのに、ダサいなんて!」




『勝手に勘違いしたのは
そっちでしょ』




奈「勘違いしても
助けてもらったんだから
ありがとうの一言くらい
言ったほうがいいでしょ!」




『別に
逆に眺めているところを
邪魔されていい気分じゃないよ』




奈「なんだよ…
もういい、じゃあね」




私は立ち上がり
屋上の扉に手をかける




奈「あ、ねぇ
名前は?」




『自分から名乗れ』




奈「見た目とは全く違うな
私は橋本奈々未」




『奈々未、ね』




奈「で?」




『齋藤飛鳥』




奈「ふぅーん、
名前、可愛いじゃん」




『っ…』




奈「ん?」




『なんでも、ない…
早く出てって』




奈「言われなくても出ていくよ」




私は扉を開けて
階段を降りていった





最後に飛鳥は
悲しい顔をした

涙がこぼれそうな瞳
八の字になった眉
下唇を噛んでいた口元

あんな顔をしなければ
私は『齋藤飛鳥』を
気にすることは無かった
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