中編

□なくなった記憶
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理佐と出会ってから3年
理佐と付き合ってから
もうすぐで2年が
経とうとしていた




でも、
最近、理佐は忙しいと言って
先に帰ってしまうし
寝る前の電話をしても
出てくれないし
連絡もあまり返ってこなくなった




私の頭によぎったのは
『浮気』という
言葉だった




理佐はそんなことしないって
ずっとじぶんに言い聞かせてきた



でも、もうそろそろ
限界が来てる





「理佐、
一緒に帰ろ」





『ごめん、
今日も一緒に帰れない
私、先に帰るね
気をつけて帰ってね』





「まって、
なんで先に帰ると」





『予定があるの』





「予定って何」





『ごめん、言えない』





「なんで言えんと」





『いろいろあって』





「いろいろって何
なんで、ねるに言えんの」





『言えないの
もう帰っていい?
急いでるんだけど』





お互い口調が強くなる
でも、私は何としてでも
理佐の口から聞きたかった





「言ってよ」





『言わないって言ってるじゃん』





「浮気なん?
そんなに隠すって」





『そんなことするわけ
ないじゃん、』





「じゃ、なんで言えんのよ」





『いろいろあるの!』





「もーいい





理佐なんて、大っ嫌い」





私はそう言い残して
教室を出ていった






一人で歩く帰り道
いつもより寂しくて
いつもより悲しかった

まっすぐ家に帰る気分になれず
近くのファミレスに入る

勉強するふりをして
勉強道具を開くが
ペンを持たずに
ただじっと教科書を見ていた



『ねーるっ』




「愛佳」




『勉強してたの?』




「うん、まぁ」




『どーせ
勉強するふり、でしょ?
なにかあった?』




愛佳は
いつもわーわー
うるさいのに
こういう時
本当に頼りになる




「理佐…」




『理佐?
喧嘩したの?』




「うん
最近一緒に帰ってくれんくて
電話出てくれんかったり
返信も遅くて
さっき問いただしたさ
でも、何も言ってくれんかった」




『そっか、』




「やっぱり
浮気、してるんかな…」




『ねる、
それは違うよ』




「え?」




『理佐は絶対
浮気なんかしないよ
幼馴染が言ってるんだから』




「でも、何してるか
言ってくれんのよ?」




『私は理佐が
何してるかわかるけど
ねるには言えない』




「2人揃って隠し事って
さすが幼馴染」




『まぁな!』




「褒めてないし」




『きっと今頃
理佐、すごい落ち込んでるよ
連絡してみたら?』




「うん、

あ、充電切れてる」




理佐に連絡しようと思って
携帯を開こうとしたけど
電源がつかなかった





『私の携帯から電話する?』




「んー、そうしようかな」




愛佳から
携帯を預かった時
愛佳の携帯が鳴った





「電話きた」





『あれ、
理佐のお母さんからだ
珍しいなー』





愛佳に
携帯を戻し
愛佳は電話に出た





『もしもし、おばさん?
どうしたの?
うん、

え…
なんで…』




愛佳の顔が
一気に青ざめた
悪いことが起こったのが
すぐにわかった




『どこ
すぐに行く
うん、うん
わかった』




愛佳は電話を着ると
私の目をまっすぐ見た




『ねる、
落ち着いて聞いて』




「うん」




『理佐が







病院に運ばれた』








愛佳が
何を言ってるのか
理解はできた

でも、
整理はできなかった














あのあと、
考える時間をくれず
愛佳に連れられて
病院へ向かった


看護師に
理佐の名前を言うと
手術室へ
案内された




そこには
理佐のお母さんがいた




『おばさん!』




(愛佳
ねるちゃんも、)




『理佐は』




(今、頑張ってると
思うんだけど…)





『何があったの』




(車にはねられたみたい
お巡りさんから聞いたお話だと
理佐が車道に飛び出て
はねられたらしいの…)




「なんで…」




そこへ、
腕に包帯を巻いた
小さい男の子と
そのお母さんらしき人が
やってきた



《あの、
本当にごめんなさい》




お母さんがいきなり
私たちに向かって
頭を下げてきた




(頭をあげてください)




《あげられません
この子を助けていただいて
それなのに、
このような事になってしまって…》




『理佐が
車道に飛び出た理由って』




《私がこの子を
ちゃんと見ていれば
こんなことにならなかったんです
本当にごめんなさい!》




(まだ、うちの子は
死んでません
そんな顔しないで下さい
うちの子、
意外と強い子なんです)




《ごめんっ、なさ、い…》




男の子のお母さんは
泣きながら謝っていた




『ねる、』




「愛佳、
理佐、いなくならないよね…」




『大丈夫
昔からどっかいっても
必ず戻ってくるやつだから』




私は
椅子に座って
じっと床を見つめて
手術中のランプが
消えるのを待っていた










手術がおわったのは
私たちが着いてから
1時間半後のことだった


手術は成功したけれど
いつ目覚めるかはわからない
そう、医者に言われた





その日は
愛佳と一緒に家に帰った
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