短編

□天体観測
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「ねぇ、レギュラス」
わたしは、隣に座る彼の名前を呼ぶ。

「なんですか、##NAME1##」

彼も私の名前を呼んでくれる。

なんだかもうそれだけのことなのに幸せ過ぎて胸が詰まりそうだった。

泣きそうだった。

私はそれを誤魔化すように言った。

「んー星が綺麗だねぇ」

レギュラスは一瞬だけ間をおいて
そうですね、と呟いた

「ねぇ、わたし、レギュラスのことが好きだよ」

そうですか、と彼は言った。

「僕も##NAME1##、君のことが好きですよ」

わたしは星を見上げた視線を彼に向けた。

視線の先には少しだけ照れくさそうにしているレギュラスがいた。

「ふふっ。それじゃあわたしたち両想いね」

そうですね、と彼はほほえんだ。

また、視線を上に上げる。

「星ってなんて綺麗なのかしら。
まるでレギュラスみたいだわ」

「……僕の名前はレグルスから来てますからね」

すこし暗い声で彼は言う。

「レグルス、か。
そういえば、ミドルネームの方のアークトゥルスも春に見られるよね」

また、春に一緒に見たい。

そう言うと、彼は困ったように笑った。

「夜桜と星空観測。
素敵だと思わない?」

「そうですね。ねぇ、知ってますか##NAME1##?
昔はアークトゥルスって北極星だったんですよ。
今はポラリスだけれど。

僕は小さい頃北極星は絶対的存在だと思ってたけど
変わってしまうんですね」

これから先、ポラリスも北極星ではなくなってしまう。

旅人に道しるべを与える存在も、いずれは変わるのだ。

「……そう、なんだ」

でも、わたしにとって、レギュラスが絶対的存在であることは変わらないよ。

「星でさえ変化するんだ、人間なんてもっと簡単に変わってしまうと思いませんか?」

「それでも、わたしはレギュラスが大好きだよ。ずっと」

彼が、また困ったように笑った。 
レギュラスは優しすぎる。

……もうすぐ、彼は私のそばを離れて遠くへ行ってしまうだろう。

それは予感のようなものだけど、なんとなくそう思う。
「そうですか。僕もずっと大好きですよ」

はにかんでいう彼はとても美しかった。
まるで芸術品のようで、触ったら壊れてしまいそうな。

陳腐な言葉だけれど、わたしにとってそれは真実だった。

「レギュ……ずっとずっと、私は変わらないから。君だけが、私のーー」

全部言い切る前に彼がわたしの唇を塞ぐ


あぁ、ほんとうに次の春も、来年も再来年もずっといっしょに、こうやって星を眺められたなら。

それだけでわたしは幸せだろうに。

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