ホロウプリンセス

□Who is me?
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痛む頭を無理やり覚醒させ、私は目覚めた。
周りは、意識を失う前と変わらず真っ白だった。
ただ、違うのは先ほどまでの自分の姿と今の自分の姿だ。
確か落ちた瞬間は、来ていた服は白い着物だったのに今や真っ赤に染まっている。
匂いからして明らかに血だった。
自分が無意識の間に何があったのか・・。
少し神経を集中させると、口の中が血の味でいっぱいなことに気付く。

『・・・私は何をしたんだ?』

ひとり呟くが、それにこたえる者はいない。
息苦しい。
そして度々襲う眩暈。
なんだこれは、と目をこすると自分の顔に傷があるのが分かった。
右目の上に一文字の深い傷。
だがそこからは血は出ていない。
つまりは無意識のうちについた傷ではないようだ。
が、失った右腕の付近からは血が絶えず吹き出ていた。
下を見ると、自分の服は半分くらい自分の血で染まっており、しかも所々深い浅い関係なく傷が出来ていた。
どうやら、重症なのは自分らしい。
また遠くなる意識にため息をついて、私は目を閉じた。



ザクザク、ザク、ザク、

何かが近づいてくる音がした。
目を開くと、目の前には2匹の白い犬がいた。

『・・なんだ、お前たち』
《・・・・》
《・・・・》
「フッ、話さない、か』

返事のない様子を見て薄く笑いながら重い息を吐き出す。

「血の臭いを嗅ぎ付たのか?』
《・・俺ラ、オマエ喰ウ》
《俺ラ、強クナリタイ》

ふと、2匹の犬は呟いた。
驚いて目を見開く。
そしてまた小さく笑んだ。

『喋れるか』
《・・オマエノ体ヨコセ》
《オマエノ肉ヨコセ》
《オマエノ強さホシイ》
《オマエノ霊圧ホシイ》

個を持ってまだ日も浅いのか、口調が片言で感情が入っていないようだ。
赤い鬣の犬が最初に話したと思うと、
次に青い鬣の犬がが思い切ったように次々と交互に話し始めた。
いずれ消えゆく我が身。
それならこの2匹に喰われたほうがましかもしれない。
私はそう思う。

『喰え』
《《!?》》
『どうせもう持たない。
それに、私は自分が誰か分からない。
自分の、存在の理由も知らない。
生きる理由を持たないから、ここで死んでも悔いはない』

嘘だった。
本当はただ怖かっただけだ。
自分のことが分からない、生きる意味がないと断定されたような恐怖。
こんな恐怖に侵されるくらいなら、今ここでこいつ等に食われて死のう。
そんな考えだった。

《ナゼ?》
『ん?』
《ナゼ、死ニタガル?》
《ナゼ、抵抗シナイ?》
『なぜ、か。何故だろうね...』
《・・俺ラハ怖イゾ》
『・・・・』
《俺ラハ死ニタクナイ》
『私、だって死にたくはない』
《ナラ、ナゼ?》
『言ったろ?自分の事が分からない。
私が生きる理由がない』


そういうと、2匹は顔を見合わせて暫くジッとする。
どう食うか相談でもしているのか、と思っているとふと赤い鬣の方の犬が話しかけてきた。

《ナラ俺ラノ姫ニナレ》
『!?』
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