緋色の少女

□それでは授業を始めます
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「えーっと、アルたん。もう一回お願いしていーい?」


「だ、か、ら、陸軍士官学校に行ってみたいって言ってるの!」



お前のその耳は飾りか、と何度も同じことを言わせるヒュウガを軽く睨む
というより彼の了承など始めから求めてはいない。求めているのは目の前に座る男の許可だけだ


先程から続けるやり取りを静かに聞いていたアヤナミは私がしびれを切らした事を感じ取ったのか、閉ざしていた口を開いた


「駄目だ」



そう一言告げるだけ告げ、アヤナミは視線を私から書類へと移した

二、三秒程の短い沈黙の後、私は当然のように反論した


「何故?」

「それはこちらの台詞だ。何故今更その様な無駄な事を言い出した」


小さく吐き出した息にはやはり引き下がらぬか、という呆れが混じっている
だがそんなこと今更気になどしない。というより最近は反論しなければ私の体調が悪いのではないかと心配してくるではないか。それはそれで腹が立つが、今はそんなことどうでもいい




「学校というものに行ってみたいからよ」




私はこの意見をなんとしてでも通したかった

どうやらこの発言は予想外だったのか、アヤナミは書類から顔を上げて私を凝視した

別に私は変なことを言ったつもりはない。だがそこまで「は?」みたい顔されれば少しうろたえる



「…なによ」

「いや、 アルたん、学校行ったことなかったの? 」

「ええ。髪色のことで色々言われて面倒だったから行ったことないわ」


存在を忘れていたヒュウガに問われた私はいつもと同じ声音で返答する。だがどうやら少し気を使わせてしまったようだ。普段飄々としている表情を崩さないヒュウガの眉が少しだけ中央に寄った

その表情が似合わないと思うのはそれだけ感情を出さない彼に慣れたからなんだろう。いいのか悪いのかは分からないが、似合わないと思うから止めてほしい


「気にしないで」と一言だけ良い、今だオーケーをくれないアヤナミを見つめた

本当はただの好奇心だけじゃない。でもそれを言うのは嫌だった。だって絶対この男は面白がるから


「いいでしょう?」

「駄目だ」

「ケチ」

「戯れ言を言っている暇があるのなら仕事をしろ」

「もう終わったわよ」

「なら追加だ」


そう言って私に紙の束を押し付けたアヤナミ

私はそれを乱暴に受け取った


なんでこいつはこんなにも融通が聞かないのよ…!



抑えきれない苛立ちを睨みに代えて私はアヤナミの執務室から出た。扉を乱暴に閉めて







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