緋色の少女

□第五章
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目を開いた時にはもう、私は目的地に来ていた


「なんだお前は!」と叫ばれている気がするがどうでも良い。まずは、この人達にこの男達の姿を見せないようにしなければならないのだから


「貴方は…」

「子供達と共に中へ入っててください」


目の前に建つ教会を目で指しながら私は神父さんに言う。シカトするなと飛びかかってきた男を軽く飛ばして大人しくさせながら


「心配しなくても、こっちには睡眠がかかってるんです。かすり傷1つなく帰るつもりなのでどうぞお気になさらず」

「は、はぁ…ですが」

「子供達を怖がらせるわけにはいかないでしょ。神に仕える貴方にも、私のすることは見てほしくない」


一緒に戦うと言いかねない神父に私は有無を言わせない笑顔を返し、半ば強制的に教会へと入らせた




「絶対に見てはいけませんよ。恐怖を知りたくないのであれば」




全員が中へ入った事を確認し、扉の鍵を閉めた音を聞き終えてから私は反帝国側に向き直った


「3秒あげる。楽に死ぬか、激痛と共に死ぬか、どちらか好きな方を選びなさい」

「なっ、結局は殺すのかよ!」

「当たり前でしょ?子供を人質に取ろうなんて考えをする外道に、生きる価値はないわ」

「お前、何様のつもりだ!」

「別に何様でもないわ。ただ気に入らないだけよ。あんた達が」



コツ、コツ、コツとゆっくりとそいつらに歩み寄る。彼らの状況を表すのなら蛇に睨まれた蛙という言葉がぴったりだろう

……いや、私は蛇ではない



「こ、この悪魔っ!」


確かにそれは私を表現するのに相応しいだろう
でもね




「違うよ」


それ以上にぴったりな形容詞が他にあるんだよ

「3秒以上たったわね」と笑みを浮かべ、そして私は数十人もの人間を同時に殺した。いや、消したという言葉が正しいだろう。跡形もなく、この世から




静かになったからだろうか。先程の神父が扉からそっとこちらをうかがっていた

「もう、大丈夫ですよ」


そういって笑顔を向ければ、「ありがとうございます」とその人は安堵した表情で頭を下げた。それを子供達は見て悟ったのだろう。元気な声が聞こえ、そして私めがけて走ってきた

ありがとう!

屈託のない笑顔で子供達は私を見た。その言葉と笑顔に私の胸がざわめいた。その理由は考えなくとも分かっている

お礼を言えて満足したのか今度は神父さんの所へ走り戻っていく。そんな中一人だけ、私の服をぎゅっと掴んだまま何か言いたげに見上げる少女が一人
どうしたの?と目線を合わせれば、その子は抱き付き言った



「ありがとう、お姉ちゃん。来てくれて、助けてくれて」




その声には聞き覚えがあった。きっとこの子があの声の主なんだろう。私を、ここへと導いた


「…違うよ。貴方達を助けたのは神様だ。貴方の声を私に届けた神様が、救ってくれたんだよ」


よく言う。神を一番信じていないのは私なのに
でも私は感謝されるべきではない。こんな綺麗な子に触れて言い存在ではない





「貴方に、神の御加護があらんことを」


私なんかにお礼を言うくらいなら存在しないものを崇める方がい

何かを言われる前に私は神父の真似事をしてその場から姿を消した




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