緋色の少女
□第四章
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「…なんで私が……」
午後5時。定時よりもはるかに速い帰宅をした私はスーパーを目の前にため息を吐く。何故なら今から私はいつもの面々達に料理を振る舞わなければならないから
別に苦手というわけではないが、とりわけ得意でもない。というより誰かに作るという経験が無いに等しい私にとって何を作れば良いのかがわからなかった
こういうときヒュウガがいれば何が食べたいとか、何を作ったらいいのかとか聞けるのに生憎今はいない。絶対ついてくると思ったのに来なかったのだ。それを不思議に思い聞いてみると
「楽しみは後に取っておかないとね☆どんな料理をチョイスするのか楽しみー」
と言われた
何、こいつ。わざとプレッシャーがかかることいいやがった
という気持ちをありったけ表情で表してヒュウガを見た後、私は絶対に無理だと思っていたアヤナミの了承を簡単に貰い、今にいたる
あぁ、本当にどうすればいいのさ。あのアヤナミも来るんでしょ?下手なもの作ったらこの先ずっと何か言われそうじゃないか
というよりチョイスってなによ。女の子らしくハートのハンバーグでも作ればいいわけ?あぁ、もう、ほんとどうしよう…
何故料理1つにこんなにまでも悩まなければならないのかと別の所にイライラし始めたその時、あるものが目に入った
!これだ!!
「で、これは?」
「手巻き寿司、ですか?」
「正解」
本当に19時に来るとは…流石アヤナミと大佐が一緒にいるだけのことはある。てか一人尋常じゃないくらいぐったりしてる人がいるんだけど。まぁ理由は聞かずとも想像はつくが
机の上を物珍しそうに眺めるヒュウガを横目で見ながら私はコナツの肩に手を置いた
「 それでアルたん、これどうやって食べるの?」
皆が着席し手を合わせた終った途端予想だにしていなかった言葉に私は内心驚愕した。アヤナミには言われるような気がしていたけどまさかヒュウガに言われるとわ。何、意外にも良いところのお坊ちゃんとかなのだろうか
ホームパーティーの定番なのにと思いながら私は食べ方を見せることにした
「1、海苔の上にす飯を乗せる。2、好きな具材を乗せて巻く。はい、完成」
2行程でできるなんて素晴らしい
「私は簡単でしょ?」と言いながらアヤナミに何を乗せるのか聞いた。どうせ作らされるだろうと予測していたから
彼が手掴みで何かを食べるなど想像はつかなかったけど、やらせてみれば様になっている。イケメンには何させても様になるのはやはり本当のようだ
「皆の好き嫌いとか分かんなかったしこれが良いと思ったんだよ。面倒なら作ったげるから注文付けて」
予想通りクロユリはハルセに作らせ、コナツは大佐に教わりながらやっているから私はアヤナミとヒュウガを担当した。巻き寿司やおいなりさんも作っていたから私も食べる余裕は大いにあった
「安全ラインを行ったねアルたん」
「まぁね。下手なもの作るより良いでしょ」
面白くて美味しいと言ってくれるクロユリに笑顔を返しつつ、私は静かに、でもちゃっかりと注文を付けてくるアヤナミの手巻き寿司をせせっと作った。予想以上に高評価だったことに少し嬉しく思いながら
「御馳走様でした、 アルさん」
「いいえ、お粗末様でした」
「また作ってね! アル 」
「気が向いたらね」
「本当に美味しかったです」
「今度一緒に作りましょうね」
「それは良かった。それも気が向いたら」
「 アルたん、泊まってっていーい?」
「それではおやすみなさーい」
「また無視?!」
いつもながらバカな事を言い出すヒュウガを無視し、私は扉を閉めた。アヤナミは何も言わなかったなと思い、それに対して少し悲しいと思った事に対して頭を捻りながら
ハルセと大佐が大方片付けてくいたお陰で早く後片付けが終った私は疲れたとソファにダイブしようとた。が、センターテーブルに置かれた書類を見てそれを思いとどまる
「あ、やば……渡すの忘れてた」
それは買い物の帰りにアヤナミに渡してくれと頼まれたもの。急ぎではないと言われたため来たとき渡そうと思いすっかり忘れていた
疲れてはいたがソファに座ってしまえば確実に行く気が失せると判断した私は疲れをため息に代えて全て吐き出し、軍服の上着を羽織り部屋を出た
きっと食事会をした分の時間を取り戻すようにまだ執務室にいるだろうと当たりを付けて
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