緋色の少女
□第三章
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廊下は嫌いだ
私は両手に書類を抱えながらそう思った
理由は簡単。見られるからだ。主にこの髪を。だからと言って切る気もないし、染めるつもりまないが…
アヤナミと一緒にいるというのも理由の1つなのかもしれないが、本当に目立っている。その視線はチクチクと髪や目に突き刺さり居心地の悪さを感じさせる。大抵自分の部屋かブラックホークから出ることはない私は滅多にアヤナミ達以外の人間とは会わないのだ
廊下を除いて
新顔とも言える私が目立つのも無理はないのだが、こうも見られるのは不愉快でしかない。慣れたと思ったのだがブラックホークのメンバーがあまりにも気にしなさすぎてこの感覚をわすれていたようだ
「…どうした。 アル」
ずっと黙りこんで私の一歩前を歩いていたアヤナミにそう聞かれる。確かに私は後ろを歩いていたはずなのにこいつには後ろにも目があるのだろうか?
なんてバレたことに内心舌打ちをしながらなんでも、と素っ気なく返す。上司に礼儀がなってないって?いいのよ。上司の前に人拐いなのだから
居心地が悪くともポーカーフェイス、ポーカーフェイス。と呪文のように唱えながら無表情で歩いていると、急にアヤナミが立ち止まった
いきなりのことにぶつかりかけた私は1つ文句でも言ってやろうかと思ったその時、首もとを何が触れ、そして涼しくなった
「な、何すっ「黙っていろ」……」
意味のわからない行動に動揺した私は軽く声を荒げたが、文句を言わせないという冷たい視線に大人しく口をつぐんだ
たまにアヤナミの白い手袋が首や耳を触れてくすぐったい。でもそれを悟られるのは癪なため懸命に無表情を貫いていた。なのにこの男にはお見通しのようで
「弱いのか」
と、口角を上げる
それはもう、楽しそうに
間違いではないが勿論気にくわない私はキッと上にある端麗なアヤナミの顔を睨む。それが肯定になっていることは勿論わかっているがどうせバレているのだから今更だ
ニヤリと笑うアヤナミを更にきつく睨んでいると、まるでそれを阻止するように視界が遮られた。別に目隠しをされたとかそういうのではない。ただ目より上の物が何かに遮られて見えなくなったのだ
それが軍帽だと気づいた時にはもう、アヤナミは歩き始めていた
もしかして気にしてくれてた…?
まさかの行動に睨むのを止め唖然とする
だって遠回りしてでも人通りが無い場所へと連れて来、私の髪を上げて自らの軍帽内におさめたアヤナミの行動を説明するにはそれ以外に思い付かなかったから
彼は頭から軍帽が生えてるのではないかと疑うくらいこれを取らない
たまにふざけてヒュウガが奪うのだがそれに対し相当彼は怒るのだ。なのにそれを私に被せた。それが、私の為なのかと自惚れてみると以外にも何故か嬉しかった
「…ありがと」
「次から被るよう心がけろ」
珍しく素直にお礼を言ってみれば「作らせておく」と相変わらず私を一切見ずに言ったアヤナミ。確かに言い方はいつもと変わらないし、表情だって依然と一緒。でも、声音と伝えてきた言葉は少しだけ優しい気がした
「ん。そうする」
だから、私ももう一度素直に頷いておく。自然と綻ぶ顔を、少し大きい軍帽で隠しながら
(あれー?なんでアヤたんの軍帽を アルたんが被ってるの?)
(アル、その書類をカツラギ大佐に見せてから私の所へ持ってこい)
(わかった)
(えっ無視?)
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