緋色の少女
□第一章
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「ヒュウガ少佐、そちらの方は?」
「拾ってきた☆」
「え、?」
別に私は捨てられてたんじゃないんだけど?
という気持ちを誰かが悟ってくれるわけもなく、ヒュウガは私をソファへと座らせた。手錠という不愉快な物を私の両手につけて
「…何、これ」
「んー手錠?」
「それは見れば分かるわ。私が聞いてるのはどうして手錠をしたのかってこと」
愛想良く笑って怒ってるのを隠していると、軍帽を被った男が当たり前の事のように答えた
「逃亡防止だ」
でしょうね
でもね、私は別に罪人じゃないんだよ?たまたまあの場所に居合わせたの。つまり何にも関係ない。てか無駄に重いんだよこれ、外せ!!
流石にそろそろ堪忍袋の緒が切れかかってきた私は不機嫌な気持ちを隠さずに表に出すことにした
「私何もしてないんだけど?というよりこの国の軍人は誰彼構わず手錠をかけていいことになってるの?」
良い子でいることに飽きた私はソファに深々と座り、足を組んでその男を見据える。そんな私の態度がお気に召さなかったのか、軍帽の男は眉間にシワを寄せた
人を殺せそうな目ね
なんて思いながらもそのにらめっこに乗る私
回りは男の不機嫌オーラに一歩一歩下がっていった。どうやらこの人を怒らせるのはあまり頭の良い行動ではないらしい
まぁどうでもいいけど
「貴様は何者だ」
「私が質問しているのだけど」
「それよりも前の質問だ」
「あぁ、そういえばそうだったわね。別に普通の旅人よ。お察しの通りこの国の人間ではない」
「どこから来た」
「ずっと遠いところ。貴方の知らないね」
「言え」
「傲慢ね。言ったところで知っているはずがない上に行くことすらできないのだから知らなくて良いことよ」
「アヤナミ様にため口を…」と何故か絶滅危惧種でも見つけたかのような視線を向けられる。そんなにこの男を怒らせてはいけないのかと疑問を抱くほどに
面白く無さげに私を見る男に、段々怒りを通り越して呆れてきた。どれだけ傲慢なのよ、と
「ねぇ、取ってくれない?嫌いなんだけど。拘束されるのって」
「なら答えろ」
「何をよ 」
「全てだ」
向かい側に腰を下ろし私と同じように座った男、アヤナミは鋭い視線で私を見据える。怒りが収まってきた私は面倒臭気にため息を吐いた
「私があそこにいたことのこと?なら別に他意はない。ボーッと歩いてたらあそこにたどり着いたの」
「戦場にか?」
「あー戦場だったっけ?あそこ」
そうはぐらかそうとするものならギラン、と効果音が着きそうな目付きで私を見る
あー怖い怖い、と思いながら私は何度目か分からないため息を吐いた
「ちょっとした野次馬精神よ。少人数だーとか叫んでた癖にばったばったと倒れてくからどれ程の手慣れなのかと紛れ込んで見に行っただけ。手出しなんてしてない。もういいでしょ?早く開放してよ」
半分本当の事を述べながら私はヒュウガに手を差し出す。取れと言わんばかりに
ヒュウガは了承を得るためかアヤナミを見て、そして嘘臭い笑顔浮かべて私の手を引いた
そう、手錠を取る動作なんて一切見せずに
「貴様、名は」
「名乗る名なんてないよ」
「…連れていけ」
「りょーかい。さぁて、行こうかー」
「はぁ?!」
マジで意味わかんないんだけど!
という私の心の叫び声は誰にも届くことなく、私はまた担ぎ上げられたのだった
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