歌の翼
□あたたかい記憶
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「かむい!すばる!」
バタバタと騒がしい音と共に可愛らしい声が家に響く
「おはよう、歌羽ちゃん」
「おはよ、歌羽」
「おはよう!!」
今日も元気だね、という昴と今日もうるさいな、とソファーに深くもたれ掛かる神威の姿に歌羽は嬉しそうに挨拶しながら、勢いよく飛び付いていく
「うるさくないもんっ。げんきなだけだもん!」
「…歌羽の場合は元気とは言わない。というより重い」
太ったか?と聞く神威に歌羽ぷくぅ、と頬を膨らませた
「そんなことないもん!すばる!かむいがいじわるいう!!」
「違うよ、歌羽ちゃん。神威はね照れているんだよ」
そうなの?と首をかしげる彼女に勿論神威は否定するが、昴流はそれ受け流しそうだよ、と楽しそうな笑みを浮かべ答えた
歌羽がいるとはいえ、二人暮らしの一軒家はとても静かだ。この静かな森の中にあるから尚更
そんな我が家に朝から賑やかな声が響く
神威と昴流が来てから今まで以上に元気な歌羽に、彼女の祖母は笑顔を浮かべた。でも一瞬、その瞳はどこか悲しそうな色を映したのだが、それには誰も気づかなかった
「本当に仲良しさんですね」
「あ、おばあちゃんおはよっ!」
はい、おはよう。と答えた優しく微笑む歌羽の祖母は、神威から離れ抱きついてきた彼女の頭を撫でながら神威と昴流にも同じように微笑み、そして告げた
「朝御飯の用意ができましたよ。冷めないうちにたべましょう」
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