歌の翼
□あたたかい記憶
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「…ついた、か」
「うん。ここはどんな所だろうね」
そう言って浮かない顔をしながら双子の青年は辺りを見回した。シンと静まり返る森のなかに存在主張する池
覗いてみれば底まで見ることが出来た
「静かで綺麗な所だね」
「ああ。少しは休めそうだ」
池を覗き込む片割れを横目に、もう一人の青年は岩に腰かけた
先程まで戦場にいた二人はやっと一息入れることができることに安堵しながらしばし、呆然と時間を過ごすことにした
人が存在しない世界なのか、それとも人が足を踏み入らない場所なのか、着いたときから変わらず静かさを保っている
日が傾きかけている太陽を池越しに眺めながら二人は緊張をほぐし、つかの間の休息をとっていると
カサカサッ
風ではない何かによって葉が音を出した
「「!!」」
その音で解いていた緊張を張り直し、感じる人の気配に二人は身構えていると
「わわわっ!」
バタンッと音を立てて少女が派手に転けた
それには二人も流石に緊張を保ちきれなかった
子供?
と、身体中葉っぱだらけの少女を見つめた
「いたたた…ちかみちなんてするんじゃなかったなぁ」
ふるふると頭を降りながら葉っぱを落とす少女だが、髪に絡まってしまったのか、あと一枚がとれない
小さな手で頑張って絡まる葉っぱを取ろうとするも、後ろ髪に絡まったせいで見えない上に悪化している
うぅ、と小さく唸りながら懸命に葉っぱを取ろうと奮闘する少女を二人はもどかしい思いで見つめた
「…じっとしてろ」
「え?」
「ちょっと待ってね。直ぐに取れるから」
そしてついに見てられなくなった二人は手を貸すことにした
ほら、とものの数秒で青年は少女が何分も格闘していた葉を髪から取り渡す。無表情な青年を見つめ、良かったね、と笑うもう一人の青年を見つめてまた無表情な青年を見、少女は渡された葉を受け取った
そして勢いよく立ち上がって満面の笑みを浮かべ
「ありがとう!!」
と嬉しそうに葉っぱを大事に胸に抱きながら礼を言った
そんな少女の笑顔が二人の心を温かくする
これが、少女と双子の出会いだった
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