歌の翼
□名探偵vs怪盗vs私
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「何かあったのかな?」
心配そうな声音で路地から人だかりが出来ている大通りを見つめるさくら。そんなさくらを止め、俺が行きます、と小狼が言うが、そんな彼を、ファイの腕から逃げたした私が止めた
「小狼達はここにいて。私が見てくるよ」
「歌羽一人でいくつもりなの?」
「うん。だってモコナ見てよ」
駄目だと言われる前に私は何故一人で行こうとするのかを説明すべく、モコナを抱いて皆の方を向ける
「こんな目立つ人達を、連れていけないでしょ?」
その言葉にモコナだけでなく皆も私の言いたいことを悟り、ため息をつくようにそれぞれが掴んだのだった
自分の着る服を
「てことで、皆はここで待機ね」
私の言葉に皆は不満げな表情をしながらも頷いた
だけど、ここで何も言わずに見送る皆ではない
「歌羽ちゃん、あんまり無茶しないでね」
「何かあったら直ぐに呼んでください」
「余計なことしてくんじゃねぇぞ」
「危ないことしたら駄目だからねー?」
毎度毎度同じことを注意する皆に、私は初めて何処か一人で行く子供ですか、とツッコミたくなる。勿論、ここで何か口を挟めば話が長くなることは目に見えてるため何も言わないが
『モコナ、見張りよろしく』
「任せて!!」
半ば無理やり押し付けられたモコナ(まぁ元々抱いてたんだけど)を連れ、私はやっぱり駄目だと言われないようにさっさとその場から離れた
「ったく、心配性の集まりなんだから」
そう小さく一言だけ悪態をついていればモコナはそんな照れなくても、と笑ってくる
…別に照れてないし
私はフードの中に隠れたモコナに不満げな顔を浮かべていると
パアァァァン!
「な、何、何?!」
銃声が聞こえた
「…やっぱり皆のこと置いてきて正解だったね」
特にさくらを
そう思いながらモコナの頭を大丈夫だよ、と撫で、人混みの中一瞬見えた光景を頭の中で整理する
今の発砲で流石の野次馬も悲鳴を上げながら後ずさりを始める。それに流されないように足を踏ん張りながら大きく息を吸い、私は決心した
…よし
「歌羽?!」
「モコナ、しっかり掴まっててよ」
そう言ってモコナの返事を待たず、私はその人混みの中心へと飛び出した