歌の翼
□名探偵vs怪盗vs私
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「わぁ……」
次の世界に着いた途端、私は感嘆を上げた
それは綺麗な風景が広がっていたからでも、見たことのない物を見つけたからでもない
「…日本みたい……」
そう、母国へと帰ってきたみたいだったからだ
「それって歌羽ちゃんのいた世界だっけ?」
「うん」
へぇ、高い建物ばっかりだねー、と私の肩にのし掛かりながらキョロキョロと辺りを見渡すファイ。肩が痛くなる前にどいて頂きだいなとチラリと上へと視線を上げれば、いつから見ていたのかファイの青い瞳と目が合う
「どうかしたー?」
「それ私のセリフなんだけど…」
へにゃん、と笑うファイはやはり格好いいと思う
最近やっとファイのスキンシップに慣れてきたけど、最初こそは本当に大変だった。赤面やらうるさすぎる鼓動やらで軽くパニック状態だ
本当、慣れというのは怖いものである
「黒ぽんの世界もこんな感じだったのー?」
「いや、全く違うな」
「黒鋼の所は私の世界の過去みたいなかんじだからね」
それも夢か?と聞いてくる黒鋼に私は正解、と苦笑いを返した
私にはぞくにいう"夢見"の力がある。だがそれは過去であって未来を視るわけではない。どうせなら未来を視せてくれれば皆の怪我を回避することが出来るのに、と何度目かわからない不満を内心で漏らす
だって、望まなくても人の過去を視てしまうこの力は正直好きになれないから
まぁ黒鋼の世界を知っているのは私がトリップ者であることも理由の一つなのだが
私がこの力をあまりよく思っていないことを知っている黒鋼は気にするな、と言うかのように私の頭を撫でてくれた
「やっぱり黒鋼ってお父さんみたいだね」
「お前みてぇなじゃじゃ馬娘なんか御免だな」
「ひっどーい」
そう軽口を叩きながら私はファイに重いんだけど、と退いてくれるように交渉していると
「来るな!来たらこいつを殺すぞ!!」
なんとも耳障りの悪い声が聞こえてきた
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