歌の翼
□壁ドン
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「歌羽ちゃん!歌羽ちゃん!」
「ん?」
「えい!」
晩御飯を何にしようかと本を片手に壁に背を預けていると、元気なさくらの声が私を呼ぶ。それに顔を上げればさくらは愛らしい掛け声と共に私の顔の横に手をついた
ドンッと音を立てながら
「・・・へ?」
「どう?」
「えっと…状況がよく分からないんだけど…」
何かを期待するようにキラキラと目を輝かせてさくらは私を見るが、状況をよく理解していない私にとってはどう対応していいか分からない
そんな私の対応にさくらは手に持っていた雑誌を私の目の前で開いた
「ここにね、壁ドンって言うのが載ってたの。女の子は皆これをされたらキュンってするんだって!」
開かれたページには、やたらとハートを使って"女の子に聞いてみた!胸キュンするシチュエーション"と書かれている
それを見てやっとさくらがした行為の意味がわかった
「つまり、さくらは私に壁ドンして本当に胸キュンするかどうかを確かめたかったんだね」
コクンっと頷くさくらに私は苦笑いを浮かべてしまう
「あのね、さくら。これは異性にされたらと言うのが前提だし、その場の雰囲気も大切なんだよ。今みたいに顔の横に手を置くだけじゃ駄目なの」
「そうなんだ…うん、わかった!」
ちょっと待っててね!と私の説明を聞いたさくらは私から離れてソファに座る男子組に近づいていった