歌の翼
□日本国
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「起きたんだね」
案内された場所に行くといち早くファイが俺に気づき、声をかけてきた。その横には姫らしき人と、前には何かを囲むように光の壁があった
「ああ…これは?」
俺はファイに近づき今までの状況を聞く。その横にいた姫(だと思う)は神菜の方へと行き、「ご苦労さまでした」とここから退出させた
「知世姫の結界。中で小狼君と星史朗さんが戦ってる」
「!あいつが来てるのか…」
桜都国のことを思い出しながらその結界を睨む
でも、中に入ることはしなかった。『小狼』が戦ってるなら俺がそれに手出しをする権利はない。それに、そのことよりももっと気になることがあった
「ファイ、その目は…?」
両方が金色になっているファイの目のこと。それに、魔力も感じなくなっていた
「魔女さんに渡したんだ。対価として」
「魔女?でも、あのとき…」
インフィニティで払うと言っていたがそれは黒鋼達が止めいていた。それになくなったのは魔力であって視力はそのままのようだし
「別のことだよ」
そう答えるファイの表情は前のものに…いや、前よりもずっと優しいものだった
…ふっきれたのか
そして、そんな表情をするときは決まってあいつが絡んでいる
「…お前があいつのこと助けたのか」
あいつとは勿論姫宮のこと
無傷は可笑しいと思っていたが、ファイが払っていたとはな
「うん。でも、歌羽ちゃん、対価を払ってたみたいなんだ。自分が死なないように」
「!」
「でも、それも一命をとりとめるほどで…足りなかった。この国に着いたときはすごい怪我で、黒様よりも酷かったんだ。見てて耐えられなかったし、女の子だから傷が残るのは‥ね。だから哉汰君達が寝てる間に魔女さんと約束したんだ。俺が払いますって」
「そう‥か」
やっぱりあのとき無理矢理でも移動させればよかったな
「歌羽ちゃんは知ってたんだね。俺の過去もあそこで何が起こるのかも」
だろうな
そう俺が答えるよりも早く
「はい。そして、私の願いを叶えてくださいました」
初めまして。知世と申します
と、自己紹介しながら知世姫が口を挟んできた
「願い?」
「夢でお願いしたんです。黒鋼をよろしくお願いします、と。勿論、歌羽さんならそんなことを言わなくとも黒鋼を助けて下さったのでしょうが」
そう言って二人で舞台裏を話してくれた
夢でセレスでのことを視た姫宮は予め魔女に自分が死なないように対価を払っていた。そして魔法を使った者に対する防御魔法の様なものに反発しつつ、ファイの呪いをうちやぶった
本来ならば黒鋼が左手をファイと引き替えに落とす。そしてこの国に来て封真が届けてくれた義手をファイが魔力を引き替えに受けとる。それが予知夢での先だったらしい
魔女は姫宮の計画を知っていたらしく、それが失敗しても大丈夫なように封真に義手も届けさせたらしい。だから本来知る必要のない先を知ったようだ
「未来を変えるのはとても難しいことですわ。でも、歌羽さんはそれをいつも難なくこなしてしまう。すごいお方ですわ」
本当にあの人とそっくり
俺の心を見透かされたような小さな呟き。それにドキリと胸が鳴る。その言葉は多分横にいる俺にしか聞こえていないだろう
俺は…なんであいつが好きなんだ?
『歌羽』と、似てるから…か?
そんなことを考えていたため気がつかなかった。ファイが何かを考えこむようにしながら俺を見ていたことに