歌の翼
□セレス国
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哉汰side
「着いた?」
「ここが…」
「セレス…」
雪が吹雪くなか、目の前には沢山の階段に囲まれた城が建っていた。ルヴァル城と言い、ファイがいた場所らしい
「駄目!さくらの体が何処にあるのかわからない!」
モコナがそう泣き叫ぶ
でも、それは俺も同じだった。前ならわかっても今はわからない
「モコナが感知していたのはさくらの羽根の気配。羽根はさくらの記憶、心だから魂がない体はわからないんだろう」
俺自信も魔力の感知は出来ても体だけではどうすることも出来ない。そんなことに苛立ちを覚えていると
「さくらちゃんはあそこにいる」
と、ファイが城を指差し断言した
「何故分かる」
「魂と体がわかれてもさくらちゃんはまだ生きている。そして、生きているものの気配はあの城からしかない」
その言葉が本当かどうかは俺にはわからないが、もしそうならば他の人間はどうしたのか
「この国の他の人達は?」
俺の疑問をモコナがぶつけてくれる。でも、ファイはうつ向くだけで何も言わなかった
何があったのかはわからないが、ここに生きている人はいないようだ
ふと、ここに来て何も喋らない姫宮に疑問を持ち、チラリと見てみると
「っ…」
何か痛みに耐えるようにじっと固まっていた
声をかけようかどうか迷っていると
フラッ
姫宮の体が傾く
「!小娘」
そんな姫宮にいち早く気づいた黒鋼が支えた
「歌羽!?どうしたの?!」
「っ……ちょっと立ちくらみしただけだよ。大丈夫。怪我が痛むとかじゃないから」
そうやってファイに優しく笑い、抱きつくモコナの頭を撫でる姫宮
「ごめん、黒鋼」
「辛いならじっとしてろ」
「ありがとう。ちょっとお言葉に甘えようかな」
黒鋼の言葉を素直に受け取り、そっと背中を預ける
俺は、その様子を見ながら伸ばしかけた手をそっと元に戻した。あいつを支えるのは俺じゃない。俺は…あいつを傷つける存在だ
黒鋼とのツーショットに胸をズキズキさせながらも俺は奥歯を噛みしめ、平静を装った
「どうやってお城まで行けばいいのかな。あの階段登るの?」
「あれは本当にあるわけじゃないんだ」
幻なのか
ファイはモコナの質問に答え、移動するために魔法を使おうとする。でも、それを『小狼』が手で制した
「風華招来」
その言葉と共に俺達の体は風によって浮き、城の前まで運ばれた。城内へと続くのであろう大きな扉の前。そこには血だらけの死体が複数横たわっていた
「小娘、目瞑ってろ」
「…うん」
ファイと似た服を着たそいつらは、この城の人間らしい
ファイに続いて城内へと足を踏入れたとき、『小狼』の体が一瞬ふらついた
本人は大丈夫だと言ったが、息が荒くなっている。そんな『小狼』を瞑っていた目を一瞬開けて辛そうな表情をした姫宮
多分、理由を知っているんだろう。それは黒鋼やファイ達も気づいてるはずだ。でも、誰も聞かなかった
「ファイ、城のどこにさくらの体があるのかわかってるのか?」
「…ああ」
迷いのない足取りとは裏腹に、表情は行きたくないと物語っている。それは前に言っていた、水底に眠るやつが関係しているんだろう
ある部屋の扉の前。ファイがその扉を開けようとしたとき
ギィッ
それは自ら開き、俺達を歓迎した。その奥には
「お帰り、ファイ」
優しい表情をした黒髪の男が立っていた
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