歌の翼

□ピッフルワールドT
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「あ、ここですね」

そう言うさくらの言葉に黒鋼さんは車を止めた

「この国のお店は分かりやすくてありがたいな」

「ほんとに。こんなにも商品があったらパーツ1つ探すのに何時間も探し回らないといけなくなるもんね」

そんな話をしながら黒鋼さんさくら、哉汰、私の四人は車から降りる

今回の国は『ピッフルワールド』と言うところで、科学がすごく発展している国
ここで私達は『ドラゴンフライレース』に出ることになり、そのドラゴンフライといういわゆる飛ぶ車のパーツを買いに来ていた

「すみません。えっと、飛翔パーツのBNQ3が欲しいんです」

「はーい、BNQ3ね。どうぞ」

「これでお願いします」

さくらは店員さんにカードを渡し、そして黒鋼さんと哉汰にお礼を言った
何故なら、この国でのお金は哉汰、黒鋼さん、ファイさんの三人が夜魔ノ国で貰った報奨金を換金したものだから

これがなかったらどうなっていたことやら…
ほんとに、三人には感謝感謝

「はい、カード」

「有り難うございます」

さくらは三人への感謝の気持ちをそのままカードを返しに来た店員さんに笑顔で振り撒く
その笑顔に顔を赤くする店員さん

君、その笑顔は哉汰達への笑顔なんだよ

そう心の中で言いながら

「さくらは天然だね。可愛いから全然いいけど」

と、さくらの後ろから抱きついた

ファイさんの抱きつき癖うつったかも(笑)

「ほえ?」

それに首を傾げるとこまでもが可愛く私は笑みをこぼす

「(可愛い//)」

「「(お前もな)」」

だから、いつもながら男子達の心情なんて知るよしもなかった



「BNQ3を買ったってことは『ドラゴンフライレース』に出るんですか?」

今だ顔を赤くしている人の横から違う店員さんが話しかけてきた

「まぁな」

「あなた達も!?」

哉汰の肯定に顔を赤くしていた店員さんが慌ててさくらと私に聞く

あれ、なんで私も?

「「はい」」

取り合えずさくらと一緒に肯定すると、「あのレースは危ないですよ!」と、止められる

その人が言うには、『ドラゴンフライ』は殆ど風力で動いてるらしく、天候で墜落したり、今回は賞品のせいで荒っぽくなるらしい。なんでもその賞品はこの町の電力をまかなえるとか

まぁさくらの羽だからそうなることは予想済みなんだけどね

そう、これが私達がこのレースに参加する理由
この国についていきなり羽根を見つけたと思ったら幸か不幸か、羽根はレースの賞品となっていた

「行くぞ」

どんなに必死に止められたとしても私とさくらが首を縦に振るはずはないとわかっている黒鋼さんは、時間の無駄だと考え車に戻る

「あ、はい!」

「はーい。あ、そうだ。「心配して下さって有り難うございますニコッ」」

『(可愛い//)』

私達はそれに返事し着いていこうとする。でも、一応心配して言ってくれてるから、さくらと一緒にお礼を言ってから車に戻ろうとしたその時

「あんまり愛想を振り撒くな」

グイッと哉汰に腕を掴まれ耳元で言われる

ドキッ

まただ…
ってそんなことより

「えっ?なんで私?」

普通さくらにじゃないの?

意味がわからず首を傾げると

「お前の方が威力つえーんだよ」

ガッっと私の帽子のつばを下げ、スタスタと歩いていく哉汰
そんな哉汰の後ろ姿を私は帽子を直しながら見つめる

意味のわからない哉汰の行動。でも今はそれよりも
こっちの息苦しさの方が謎だった

スゥーーーハァー

取り合えず一度深呼吸をする。それでも胸の苦しさは取れない

「姫宮」

ドキッ

「へ?//」

名前を呼ばれ赤くなる顔を帽子を直してるふりしてつばで隠す

「……置いてくぞ小娘」

「あ、はい」

ドクン ドクン

止まらない鼓動
哉汰にだけ反応するらしいこの不整脈と不思議な気持ち

この感情の名を知るのはきっと、そう遠くない未来
その時私は、どう思うのだろうか
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