緋色の少女
□第六章
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「ねぇ。私をここに残したいって思ってるのは貴方だけじゃないの?」
夜。アルの弱点を探そうと躍起になっていたヒュウガ達は流石に疲れたのか帰宅許可を貰いに来た。今日は珍しく仕事が少なくアルの働きかけでほぼノルマはこなせていた為許可を出したおかげで今は アルと二人しかいない
煩い現況がいないせいか静かな執務室で、 アルは私に書類を渡しながらそう言った
本当はこいつの弱点ではなくあの力の弱点を探せという意味だったのだが、少し言葉が足りなさすぎたようだ。 アルがそう思うのも無理はないだろう
特にアルがそう思っていようが何の問題もないのだが、私のミスのために起きたことなので一応弁解だけはしておく
「お前と遊びたかっただけだろう。気にする必要はない」
そう言うと疑った表情でアルは私を見る。それに一つため息をつき理由を話した
「お前の弱点探しだ」
「は?」
「不思議な力を持ち、強気で、礼儀知らずで、大食いで、マイペースだということしか知らぬからな」
「…それで先ずは弱点、と」
「知っている方が後々使えるからな」
表情からして絶対に弱味などみせない、と思っているのだろう。いつもの無表情を仮面のように被り始める
勿論そうなることは想定済みだった私は、それを剥がしにかかる
「…あぁ、そうだアル」
手招きをし、顔を近づけるように命令する。少し真剣な表情をすれば直ぐに引っ掛かる素直さと無防備な所は時にアルの弱点となる
近づいてきた アルの耳に私はふっ、と息を吹き掛ける。身を引けないように腕を掴み、 空いた手で首筋から鎖骨へと指を滑らせながら
「っ、!!?」
すんでの所で声を我慢したアルは即座に力を使って私から距離を取る。やはり腕を掴んでいてもその力は使えるようだ。便利であり、厄介でもある
顔を真っ赤にしてこれでもかと私と距離を取ったアルは息を吹き掛けた耳を己の手で押さえ、何か言おうとぱくぱく口を動かしているが言葉になっていない
「私はお前の弱点など調べずとも知っているがな」
ニヤリと口角を上げれば、アルは直ぐさま反論を口にする
「べ、別に今の弱点じゃない!生理的な反応よ!!」
「ほう。つまり感じやすいと」
「なっ!別にそういう意味じゃっ」
動揺しているからかいつものように冷静な返しが出来ないため自分を貶めかねない危うい言葉ばかりを発する。こういうものに弱いとは意外だと思いながらアルが落ち着くまで暫くは仕事を放棄し遊んでやった
私しかしらない、アルの表情を見て優越感を抱きながら
「っ、あんたの弱点も見つけてやる!!」
最終的にはアルのそんな捨て台詞で幕を閉じたのだった
「(なんなのあいつ!!)」
そして機嫌が直るのに1週間かかった