歌の翼

□玖楼国U
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さくらを死なせないために、王妃が一時的に止めた時間のなかで『小狼』は願った。"もう一度"と
そして対価を払うために『小狼』はずっと飛王に囚われていた。東京で会うまで

「…だとしても、俺の罪が消える訳じゃない。俺の願いが歪みを産み、その歪みによって様々なものが道筋を変えた。自分の願いを叶えるために俺は禁忌を犯した。だから選んでくれ、これからのことを」

本当のところはわからないけど、ファイは双子として産まれてこなかったのかもしれないし、黒鋼の両親もあんなふうにはなくならなかったかもしれない。勿論、私や哉汰、あの人のことも同様だ
でも、だからと言って…ね?

「歌羽!?」

モコナの驚き声を聞きながらも私はゆっくりと『小狼』に近づき、ペチンッと『小狼』の両頬を叩いた
さほど力を込めた訳じゃないから痛みもたかが知れてるだろう

「バッカだなー『小狼』。そんな悲愴な顔してたら黒鋼と哉汰が拗ねちゃうよ?」

「「誰が」」

なんてハモる二人はまんざらでもないんだろう。そのことに笑いながら私は自分より背の高い『小狼』を見上げながら言葉を紡ぐ

「確かに『小狼』は禁を犯した。でもね、その為に起こった全ての事が『小狼』のせいじゃないし、それを自分だけで背負おうとするなんて、ある意味傲慢
それに…私も『小狼』の立場だったら同じことしたよ。守りたいものを守れるなら、ね」

私の言葉に同感だと言うように皆は『小狼』を見て頷く

「でも私達が巻き戻された時間の事を知ったら『小狼』から私達が離れてくとかおバカなこと思ったっぽくてムカついたから代表して私が叩かせてもらいました…言ったでしょ?『小狼』は一人じゃないんだよ」

小さい子をあやすように『小狼』の頬を両手で包み込み、私は微笑んだ。『小狼』の居場所はここだよと示すように。その意図を感じ取ってくれたらしく、『小狼』も微笑みかえしてくれる
そんないい雰囲気なのに、何故か背中に突き刺さる視線がいたい。けど…うん、気のせいだよね

ということで細かいことは気にしないことにした
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