歌の翼
□玖楼国U
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潔斎時に遺跡に入れるのは神官と儀式を受ける王族の者だけだったらしく、遺跡内に人一人いない
そんな静かな遺跡には、私達の話し声と足音だけが響いた
『小狼』の案内の元、長い階段を上りきるとそこに広がっていたのは水の流れが止まった水場。物語で出てきそうな不思議な雰囲気が漂ったこの場から、本当に時間が動いていない事がわかる
そして同時に疑問も産まれた
ここで潔斎をしているはずの『さくら』は?
男の子達の話では『さくら』はここにいるはず。なのに何故その『さくら』がいないのか。その疑問はモコナの言葉の後に紡がれる『小狼』の話よって解決された。いや、思い出したという方が合ってるのかもしれない
「『小狼』はいつまであの『さくら』と一緒にいたの?」
「……ずっと」
「え?」
「ずっと一緒だった。初めて出会った七歳の誕生日の7日前から、俺がこの姿の歳になるまでずっと」
その言葉に夢で視た『小狼』の過去を思い出す。先は知らずとも過去は覚えている。皆の悲しい過去。あの、悲しい選択は
「時間を巻き戻したんだ。対価を払って」
「魔女に…か?」
「ああ」
「理由を聞いてもいいのかな?」
「あの日さくらを取り戻すために」
これから話されるのであろう『小狼』と『さくら』の過去話を、私は目を伏せながら聞いた
これを聞いた後、私達は選ぶんだろう
この後どうするのかを