歌の翼
□桜都国T
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「もーう。なんで呼んでるのにこないのー?黒わん」
そんなことを考えていると、黒鋼に怒りながら(と言ってもいつものようにへにゃりと笑っているが)ファイが近付いて来た
あの「黒わーん」っていう声は空耳じゃなかったのか…
勿論、黒鋼はこのファイの呼び方に反論しようと怒鳴ろうとするが
「黒鋼うるさい!歌羽が起きちゃうでしょ!!ヒソヒソ」
それを途中で口に張り付いてモコナがさえぎる。黒鋼はそれに眉間にシワを寄せながらも黙る
「あ、ほんとだーなんで歌羽ちゃん寝てるのー?」
モコナの言葉で姫宮のことに気付き、ファイは俺達に聞く
「さぁ?本人は何も言わなかったが、多分痛いんだろう」
モコナとじゃれ会って答えれそうもない黒鋼を横目に俺が答える
立ち上がった時に顔をしかめてたからあの言い訳の理由もこれだろう。何故痛いことを言わずにわざわざ嘘をついたのかはわからないが、どうせ迷惑かもとでも思ったんだろ
ファイは俺の言葉「そっか」と返し、一瞬だけ心配そうに姫宮を見たが、またすぐにいつもの表情に戻った
「で、おめぇはなんで俺を呼んだ」
モコナの両頬を引っ張りながら黒鋼はファイに聞く
「そうそう、これをね――」
と答えながら黒鋼の足下に置いてあった大きめの袋を持ち上げるファイ。そして…
「持ってきてもらおうと思ってーよっと」
ドサッ
黒鋼の膝の上に落とした
「がっ!!てめぇ何しやがる!!」
黒鋼はボリュームを落としながら怒鳴る
ファイ、どんな時でも黒鋼をいじるのは忘れないんだな。まぁこれで、さっきみたいに怒鳴ってたら俺も黒鋼をいじろうと思ってたが…
俺は密かに舌打ちした
「だって重いんだもんー黒わん、持って」
「自分で持て!!」
とか言いながらも、あははーと笑いながら小狼の所へ戻っていくファイについていく黒鋼
なんだかんだ言いながらいい奴だよな、黒鋼って
強面で、口も悪いが。
そういや姫宮が前に言ってたな。黒鋼は優しい人だって。あの時は感とか言ってたが、感なんかで黒鋼を優しいやつと予想はできねぇよな。顔的に…
それとは逆に、感じのよさそうなカイル先生とは全く話そうとせず、冷たい態度を姫宮はとっていた。まるであの先生にはよからぬことがあると分かってたかのように
もしかしてこいつ…
俺は横で規則正しく寝息をたてている姫宮を見ながらひとつの仮説をたてた
確信のない、迷走めいた仮説を――