歌の翼
□桜都国T
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俺達はその音に素早く反応し、状況を判断するため割れた窓から一定距離をとる
さっきまでいた場所には硝子の破片が飛び散り、窓からは黒い変な生き物が入ってきていた
「わーお家借りたらいきなりお客さんだー」
「招いてねぇがな」
「市役所のお姉さん達なら大歓迎だったんですけどねー」
ほんと呑気だな…
てかお前、あのとき隠れてたじゃねぇか
まぁこんなこと考える俺も呑気なんだが
とりあえずは誰も怪我してないよな
寝てるさくらは黒鋼に抱えられてるし、姫宮はファイに腕掴まれながら後ろに隠されてるし、モコナは…まぁ大丈夫か
シャッ
「おっと」
自分の体の一部を刃物に変え、それを振り回す生き物
その攻撃をかわしながらどうやって倒すかを考えていると
「小狼危ない!!」
姫宮がそう叫けぶ
それを聞き小狼を見てみると腕を怪我していた
ちっ、右か
俺は生き物が小狼に気をとられているうちに壁を蹴りあげて
ゴッ
上から生き物の頭にかかと落としをする
致命傷を与えられたらしく、生き物はシュウウウと音と共に倒れた
にしても、やっぱ素手は面倒だな。剣があれば小狼を怪我させることはなかったんだが…まぁ無いものは仕方ないか
「小狼、大丈夫か?」
隣に立つ小狼に振り返り聞くと
「ああ、ごめん」
と、すまなそうに謝る小狼
「いや、気にするな」
そんな小狼の肩に手を置き俺は笑いかける
右…だからな
「小狼!大丈夫!?」
少し顔をしかめながら小狼に駆け寄る姫宮
てか痛いなら走るなよバカ
俺は心ん中で姫宮に暴言を吐く
「はい。少し切っただけですので」
「そっ…か…」
小狼はそう大丈夫だと言ったのに、何故か姫宮は暗い顔をしながら手を握りしめている。まるで、自分のせいだと攻めているように
「歌羽さん?」
「…ううん、なでもない。大きな怪我じゃなくてよかったよ」
そう言いながらも、姫宮の表情は暗いままだった。
こいつ、何を気にしてるんだ?
そう思いながら横目で姫宮を見ていると
「可愛い女の子が出迎えてくれたり、綺麗な家紹介してくれたり。親切な国だと思ってたけど、結構ブナイ系なのかなー」
ファイが誰にともなく言っていると
ブア
「消えた!」
倒れてた生き物が突然消えた。そのことに皆が驚いているなか、姫宮だけが「そっか。だから…」と納得していた。
何に納得したんだ?姫宮のやつ
それに、なんであの生き物は消えたんだ?
「やっぱり危なそうな国だねぇ」
ファイはさっきの言葉に自分で結論付けた