歌の翼
□ひとつめの物語
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コンコンコンッ
「歌羽です。」
「…入りなさい。」
スッ
「失礼します。侑子さん、渡したい物ってなんですか?」
「歌羽、左手を出しなさい。」
「はい…?」
私は言われるままに侑子さんの前に左手を出し、その手に侑子さんが触れると
ジャラッ
という音とともに、さっきまで無かったひんやり冷たい違和感が左手に感じた。
見ると、侑子さんが触れたところにはシンプルな星のブレスレットがつけられていた。
「あの…これは?」
「そのブレスレットの中には貴方が今まで使ってきた剣が入っているわ」
「!?でも、どうして…」
「ないと困るでしょう?」
「そうですけど、対価がいるんじゃ…」
「それはもう貰っているわ」
「えっ?」
「貴方は闘いか方を教わる代わりにここで働いてきたわ。でも、歌羽があんまりにも一生懸命働いてくれたから対価を貰い過ぎたのよ。だからこれを…」
そう言って侑子さんは私につけられているブレスレットを指差し、優しく微笑んだ。
「ありがとうございます!!」
私は自分の左手を抱きしめ、侑子さんに満面の笑みで返した。
多分だけど、これを私に渡したのは他にも理由が有るんだと思う。それが何かはわからない。けど、今言わなかったってことはまだ知る必要が無いからなんだと思う。それに、理由を知る必要になったら侑子さんは教えてくれるだろうから、それまでは気にしないでおこうかな。
「さて、そろそろ行きましょうか。」
「そうですね。」
そう言って私と侑子さんは部屋をあとにした。