歌の翼
□ひとつめの物語
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「歌羽はどうする?」
「私は遠慮しときます…」
「そう。」
前に侑子さんに『鏡聴』を教えてもらったときに一度してみんだけど…私はあんまり好きじゃないんだよねこれ。というより怖いの方が正しいかな。
だって知らない人の声が、しかもいない人の声が聞こえるんだよ!?もう、ほんとっあの時めちゃくちゃ怖かった!!
心の中で叫びながら私は四月一日に目をやった。
「目を閉じて 耳を澄ませて 何も考えないでいいの ただ、最初に聞こえる音だけを聞いて。」
私は鏡聴をしている四月一日を見ていて、ふとあることを思った。
この場面視たことある。『外でのお茶』『狐の嫁入り』『鏡聴』……ということは今日、なんだろうな。それなら四月一日が聞く言葉は…
『今日行くから――用意して待ってて――』
「今の、が?あのう 意味、全然わからないんすけど」
「…そう。今日なの」
やっぱり今日なんだ…
「いや、だから わかんねぇすよ。マジで」
「……用意しましょう。迎える用意を。歌羽も用意しなさい。必要な物は部屋にあるから」
そう言って侑子さんは店に入って行った。
「えっと…歌羽ちゃんはどういうことなのかわかる?わかるなら教えてくれると嬉しいんだけど…」
ひとり状況を理解していない四月一日が私に聞いてきた。
「始まるんだよ。もうひとつの物語が」
「それってどういう…」
「クスッ直ぐにわかるよ」
私は四月一日の質問にわざとわかりにくい答えを言い、この店の自分の部屋に向かった。