nagi

□酒場Aナギver(ナギ×主人公恋人前設定)
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「おいっ、ぼさっとすんな。もうすぐ港に着くぞ。」
「あっ、すみません。急いで準備してきます。」


タタタッ

と、さっきまで微妙な表情で海を眺めていた○○が、寄港準備のために駆けていく。

──…はぁ、またか。

数日前から○○の様子がおかしい。と言うより最近、港が近付く度にあいつの様子がおかしくなる。
いつもはヘラヘラしながらボケッとしているあいつだが、最近は何か考え込むような表情でボケッとしている。
その都度理由を聞こうと思うが、様子がおかしくなればなる程あいつは、無理して笑うようになった。

頑なに笑顔を崩さねぇそんなあいつの態度が俺を拒絶しているように思え、何も聞けねぇままだ。あいつのあんな辛そうな顔なんか見たくねぇのに。俺はドクターみてぇに女心なんか理解できねぇし、シンみてぇな洞察力もねぇ。俺に出来る事と言えば、あいつの好きなもん作ってやるくらいだ。おかげでここのとこヤマト料理続きでハヤテから苦情がきていたが、そんなことどうでもいい。あいつのいつもの笑顔が戻るなら、ハヤテが泣こうがやつれようが知ったこっちゃねぇ。


──お前の好きなもん何でも作ってやる。俺に出来る事ならなんだってする。だから、いつもみてぇに笑ってくれねぇか、○○。












「じゃあてめぇら、各自用を済ませたら酒場に集合だ。」

船長は俺達にそう告げてから、港で待ち構えていた女共を抱えて去って行った。毎度の事だがよく飽きねぇな。チッ、○○の前で女のケツ触ってんじゃねえ。歩く猥褻物め。

○○が後ろから駆け寄って来る気配を感じ振り返ると、また無理して笑っていた。
いったい何が原因なんだ…んっ?こいつ今船長の方を見てたか?…もしかして、こいつの辛そうな原因って…



船長か?女に囲まれる船長を見るのが辛かったのか?それなら港が近付く度おかしくなるってのも頷ける。



──そうか、○○は船長の事を…










 




「ナギさんどうしたんですか?」
「………」
「ナギさん?ナ〜ギさん?お〜いナギさ〜ん?聞こえてますかぁ?」
「…そうか、船長か…」
「船長がどうかしたんですか?」
「っっ!いやっ、なんでもない。」
「そうですか?なんかナギさんぼ〜っとしてて…ハッ!もしかして体調悪いとかですか!?大丈夫ですか?」

気付くと○○が心配そうな表情を浮かべ、小首を傾げて俺の顔を覗き込んできていた。



俺を心配していつも以上に下がった眉も、ビー玉みてぇに透き通った目も、半開きで少し間抜けな口も全部、こんなにも愛おしいのに。


──…なんでよりにもよってあんな猥褻物なんだ。船長の手にかかればお前なんか一晩で孕まされるぞ。俺ならちゃんと…って真っ昼間から何考えてんだ俺は。チッ、これじゃあ船長とかわんねぇ。

なんて馬鹿な事を考えていると、
○○の手が俺の額に近付いてきて…
 




ガシッ…

「えっ?」





伸びてきた手を、咄嗟に掴んでしまった。





「あっ、あの、…。」
「…。」
「手…。」
「…。」







──“お前が欲しい”





今にも零れ落ちそうになる本音を、飲み込んで。




──…この気持ちを伝えたところで、お前を困らすだけだってことくれぇわかってる。だから、






「…迷うといけねぇから。」



伝えられることの無いこの想いを、建て前の言葉で覆い隠して。


──…それでも、このぬくもりを手離したくねぇ。
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