アルカ遺跡

□紅い雨が降る
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なんだか雲行きの悪い日だった。
ナーエの森には黒く重そうな雲が森全体を、プリンプ全体を覆うようにして垂れ下がっていた。

ここのところ快晴が続いていたため、そろそろ雨が降ってもいいなとは思っていたが。
これは結構土砂降りになるかもしれない。


雲を木々の隙間から垣間見ると、冷たくなった風が羽織った紅いマントを吹き上げ、全身にその冷気を浴びせてくる。


もう春も間近で暖かくなってきたというのに。
きっと冷たい豪雨になるな。
久々の外出なのについていないな。


風に当たりながらそんなことを考える。
一瞬帰ろうかとも思ったが、そんなことよりもあいつを回収してからだと小さく頭を振る。


「うー」


小さく聞こえた声は間違いもなくこの先だ。
約束場所のナーエの森の中心。

歩を進めると急に開けた場所に出る。
そこに木の幹に寄りかかるようにして指先に止まったてんとう虫を見つめている少年。

長袖だが、寒いのか、顔を長袖の襟に首をうずめている。

「遅れた。すまんな」
「うー、寒い」
「見ればわかる。そろそろ雨も降りそうだ、遺跡に行くぞ」
「うん」

少年、シグは私の言葉にうなずき、後ろの触覚(?)をピコピコと動かすと素直に後ろをついてくる。

寒そうにうーうーと唸っているのを見るとなんだか可愛らしいが、とりあえず帰ることを先決にする。
あとで家でゆっくり楽しもう。
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