短編集02

□約束
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茉「……あれ?

ここどこだろ…」



今日はオフを利用して、大学のオープンキャンパスに来てたんだけど……



茉「……迷っちゃった」



気が付いたら誰も居ない中庭みたいな所に居た



さっきから大分歩いてると思うんだけど、なかなかここから抜け出せない



茉「大学広すぎじゃない?」



よし、受けるならもう少し小さい大学にしよう



そんな事を考えながら更に歩く



『こんな所に人が来るなんて珍しいね

もしかして迷子?』



いきなり声がしたから前を見たけど誰も居なくて、キョロキョロと辺りを見回してみた



『違う違う

こっちだよ』



茉「っへ?………っわ!」



声のした方を見てみると、木の上から人が降りてきた



『ごめん、びっくりさせちゃった?』



茉「はい…少し」



いきなり木の上から人が飛び降りて来たら、誰でもびっくりすると思うんだけど



それにしても、綺麗な人だな……



背格好は玲奈さんに似てるけど、顔は凄く整っててかなり格好いい



『で?』



茉「……はい?」



『迷子なの?』



茉「あぁ…はい」



『ここのキャンパス無駄に広いからねー

どこに行くつもりだったの?

送って行ってあげるよ』



茉「オープンキャンパスで校内を見てただけなんで、どこに行くつもりとかは……」



『そっか

だったら受付まで送ってあげるよ』



茉「ありがとうございます」



そう言って歩き出したから、後ろを付いて行った



茉「あのっ……」



『何?』



茉「どうしてさっき、あんな所に居たんですか?」



『あぁ、好きだから

この学校ってさ人が多いから、大体どこ行っても誰かしら居るんだよ

けどあそこは迷子くらいしか来ないから、昼寝とかにちょうどいいんだよ』



茉「そうなんですか」



『そう言えばさ、オープンキャンパスに来てるって事は、この学校受けるつもりなの?』



茉「いえ…まだ決めてないんです

他にも少し気になってる所があるので」



『ふーん

ならまだ後輩になるかは分からないって事か』



茉「そうですね」



『残念、こんな可愛い後輩が入ってくれれば良いと思ったのに

この学校に来なよ

そしたら色んな所案内してあげるし

少しだけど勉強も見てあげれるよ?』



茉「んー……

考えておきます」



『ははっ

何だそれっ』



クシャッて笑う顔は凄く子どもっぽくて、少しドキっとした



『ほら、受付着いたよ』



茉「ありがとうございました」



頭を下げてお礼を言ってると、受付の人が声を掛けてきた



「あれ名前じゃん

名前もスタッフだっけ?」



『いや、違う

一人迷子になってたから連れて来ただけ』



「あ、もしかして向田さん?

急に居なくなったから探してたんだよ」



茉「すいません……」



『いやいや、ちゃんと人数確認しろよ

まだ道なんて分からないんだから、迷ったら下手すると帰れなくなるんだし』



「ごめん…」



受付の人が怒られてシュンとしてしまった



『私じゃなくてこの子に謝らないと』



「ごめんね、しっかり人数確認してなくて……」



茉「いえ…私も勝手に行動してしまって、すいませんでした」



お互いに頭を下げてると、誰かの手がポンって頭に置かれた



顔を上げてみると、案内してくれた人が私の頭に手を乗せて優しく微笑んでた



『もう迷子になっちゃダメだよ』



茉「……はい//

本当にありがとうございました」



『うん

じゃあ、もしこの学校受けて合格したら4月にまた会おうねー』



茉「はい

あ、あのっ……」



踵を返してもと来た道を引き返そうとするあの人に声を掛けると、クルッと振り返って首を傾げる



茉「あの、名前だけでも教えてもらえませんか?」



『っあ、そっか名前言ってなかったっけ

私は名前、苗字 名前だよ

この学校の教育学科

ちなみに今1回生だよ』



茉「私、向田茉夏って言います

この学校の学生になって、4月に必ずあの場所に行きます」



私の言葉に少し驚いた後、優しく微笑んで



『なら待ってるから

約束だよ』



そう言ってまたポンポンって私の頭を軽く叩いて、どこかへ歩いて行ってしまった



茉「よしっ

この1年、本気で頑張ろう」



来年の4月、またあの場所で苗字さんに会えるように……
 

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