短編集02
□変わらない想い
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『うー……』
由「また唸ってる……
そんなに気になるなら連絡すればいいのに」
どうも苗字名前です
今私はチームBの公演に出るため、劇場の楽屋に居るんだけど……
『だって玲奈、今海外だし……
時差とかもあるし……
連絡したって大丈夫としか言わないし……』
携帯を見つめてウジウジ悩む事、かれこれ2日間……
由紀に鼻で笑われても仕方ない……
『うー……』
由「名前って普段サバサバって言うかあっさりしてるのに、玲奈の事になると結構面倒くさくなるよねー」
『うるさいなー
恋人の心配するのは当たり前だろー?』
私の悩みの種は、恋人である玲奈の事だ
二日前から撮影で海外に行ってるんだけど、行く前からずっと体調が優れないって言ってた
当日も顔色が悪かったし、実際に熱もあった
それなのに、何度聞いても大丈夫としか言わなかった
由「はいはい
そんな事より、早く着替えないとそろそろ時間だよ?」
『そんな事って……
私にとっては玲奈の事と、公演に出る事は同じくらい大切な事なんだよ』
由「分かったから
早く着替えて来る!」
そう言って無理矢理立たされて、背中をバシッと叩かれた
『はーい……』
渋々返事して携帯を置いて、着替えに向かった
-公演後-
『……………』
由「お疲れさま
まだ帰らないの?」
反省会も終わって更衣も済ませて楽屋の椅子に座ってると、由紀がまた声を掛けてきた
『……………』
隣に座った由紀に、無言で携帯を渡した
由「あー……
これはちょっと心配だね」
『……うん』
由「……名前?
まさか行くとか言い出さないよね?」
『今の所は……』
由「……問題はダメだからね?」
『分かってる』
由「なら良いんだけど
約束したんだから、ちゃんと守ってよ?」
『しつこいな……
分かってるって』
少しイラっとしながらそう言って由紀を見ると、ちょっとビクってなった
昔…AKBに入った頃の私は凄く短気で、問題ばかり起こしていた
あまりに問題ばかり起こすから、ある日とうとう秋元先生に呼ばれてチームを降りるように言われてしまった
だけどその時リーダーとして一緒に呼び出されてた由紀が、もう二度と問題は起こさせないからチームに残して欲しいって秋元先生に頼んでくれた
秋元先生と由紀に、二度と問題は起こさないって約束する事でチームに残る事が許されたのだ
由「玲奈もプロなんだから、自分の体調管理くらい出来るでしょ」
『そうなんだけどさー……
でも玲奈って無理する事多いから……
放っとくと倒れるまで頑張るような奴なんだよ』
由「分かった分かった
って言うかそんなに心配するんだったら連絡すればいいのに」
『だって私が連絡したら、玲奈絶対返事返してくるもん……
私に連絡する暇があるなら、少しでも休んでて欲しいし……』
由「ホント名前って玲奈の事になると面倒くさいよね」
由紀のこの言葉には、これ以上グチグチ言うなっていう威圧感が込められてた
由「……携帯鳴ってるよ?」
机の上に置かれた携帯が、メールの着信を知らせる
『うーん……』
由紀に言われて渋々携帯に手を伸ばして、画面を開く
『……………』
-ガタッ
由「ちょっと?!
どこ行くの?!」
荷物を引っ掴んで楽屋を出ようとする私に、由紀が慌てて駆け寄って来て腕を捕まれた
『……離せ』
由「離して欲しいんだったらここに居て」
『無理』
由「なら離せない」
『離せってっ』
由「二度と問題起こさないって約束したでしょ?!」
私達のやり取りに騒がしかった楽屋が一気に静まり返った
『離せ!』
由「だったら落ち着いて」
『うるさい!
私に指図するな!』
由紀の腕を振りほどいて楽屋を飛び出した
後ろで何か言ってたけど、私は今それどころじゃないんだ
……玲奈の所に行かなきゃ