短編集02

□許して
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-ピンポーン



『来た来たっ

はーい』



-ガチャ



玲「あ、名前ちゃん

ごめんね、少し早かったかな?」



玄関を開けると玲奈が立っていた



玲奈はSKEと言う名古屋を代表するアイドルグループの一人



片や私は何の変鉄もない、ただの一般人



こんな私が玲奈に出会っただけでも奇跡みたいなもんなのに、何がどうなったか今では彼女と呼べる存在なのだ



『全然、時間ぴったりだよ

とりあえず上がって?』



玲「うん、お邪魔しまーす」



玲奈が入ったのを確かめて玄関を閉めると、大きく息を吸い込む玲奈



『……何してんの?』



玲「んー?

名前ちゃんの匂いがするー」



『どんな匂いよ?!

そんな事より早く上がってよ

私入れないじゃん』



玲「あぁごめん……」



後ろで私がそう言うと、申し訳なさそうに謝って部屋に上がった



玲「名前ちゃんの匂いがいっぱいだー」



『わー……危ない人家に入れちゃったよ……』



ジト目で玲奈を見ると、プクッと頬を膨らまして可愛らしく怒ってきた



玲「危ない人じゃないよー

名前ちゃんの彼女だもんっ」



『はいはい

その辺適当に座って』



適当に流しながらキッチンに立つ私に、ベーっと舌を突き出してソファーに座った



『ほい、こっち玲奈のやつね』



コトンとカップを机に置いて、玲奈の隣に座る



玲「ありがとう

ねぇ名前ちゃん、ちょっと聞いてもいい?」



『何?』



玲「ちゃんと掃除してる?」



『うーん…たまにしてる

けど今日はちゃんとしたよ?』



私の言葉に、元々大きい目を更に真ん丸にして驚く玲奈



玲「掃除はこまめにしなきゃダメだよ」



『これでも今日は欠講念入りにしたんだけどなー……』



玲「分かった、なら私がしてあげるよ」



『いや、いいよそんなの

せっかくの休日なんだし、ゆっくりしてなよ』



玲「ううん、私掃除とか好きなの

綺麗になって行くのとか見てるとスッキリするし」



『そうなの?

じゃあ玲奈がそう言ってくれるなら、お願いしようかな』



玲「うん、任せてっ」



そんなこんなで掃除をする事になってしまった



玲「っわ……」



『……楽しそうだね』



玲「むー……

大丈夫とか言ってくれてもいいのに」



『いや、だってどう見ても大丈夫でしょ

雑誌の埃が舞っただけなんだし』



玲「そうだけどさー……」



『はいはい、大丈夫?』



玲「もういいもんっ!」



棒読みで聞いた私に拗ねたのか、唇を突き出してまた掃除をし出した



玲「………ん?

これ何?」



玲奈がベットの下から出して来たのは、どこにでも良くあるお菓子の空き箱



『あっ…それは……』



止めに行こうとしても時既に遅し……



玲「………何これ…

全部メンバーとの写真じゃん」



『いやーそれは……その…』



玲「どう言う事?!

ちゃんと説明してっ!」



空き箱を片手に詰め寄ってくる玲奈



これはヤバい…この顔は相当怒ってるよ…



私がSKEのメンバーと仲良くしてたのは、ちょっとした偶然がいくつも重なったからな訳で……



それで、たまたま仲良くなったメンバーの数人と友達以上恋人未満な関係になった訳で……



いや、今はそんな事は問題じゃない



『落ち着いて玲奈……』



玲「触らんといて!」



地が出てるよ……



髪に伸ばした手をパシッと払い退けて、睨んできた



『落ち着いて?

みんなただの友達だから』



玲「じゃあどうして全部ツーショットなの?!」



『本当に、普通に遊んでただけだって』



……遊んでたの意味合いは少し違うかもしれないけど



玲「だったらこれは何?!」



そう言って突き付けて来たのは、珠理奈との写真



あー…これはもう弁解の余地もございません……



だってその写真に写ってるのは、私と珠理奈がキスしてる所だから



けどそれは珠理奈がふざけてしてきただけだし、私だってビックリしたんだし……



まぁ、この時の事に限って言えば…だけど



玲「ねぇっ、聞いてるの?!」



『え?あぁ…はい、聞いてます』



私の返事に"はぁ…"と溜め息をつくと、今度は悲しそうな表情で見つめてきた



玲「分かってるよ……

名前ちゃんがメンバーから人気ある事くらい……

それに私と付き合う前から、メンバーとちょくちょく遊びに言ってた事も……

もちろん、付き合った後の事も……

でも、名前ちゃんに本気で好きって言って貰えるのは私だけだって信じてたのに……」



ついにはポロポロと涙を流して泣き出してしまった



『玲奈……』



玲「ヤダ…離してっ……」



抱き締めた腕の中でドンドンと私の胸を叩いて暴れる玲奈を、更にギュッと抱き締めると大人しくなった



『不安にさせたのは悪かったと思ってる…ごめん

けどね、みんなとは本当に何でもないんだよ

本当にただの友達だから』



……キスまではセーフだよね?



玲「……だったらあの写真は何だったの?」



『あれは珠理奈の悪ふざけだよ

写真撮る時に急に名前呼ばれて、振り向いたらキスされた

ただそれだけの事……

だから珠理奈とは何でもないし、玲奈が不安になる事もない』



玲「ホントに?

……信じてもいいんだよね?」



『うん、信じて?

私が好きなのは玲奈だけだから

愛してるのは玲奈一人だから』



そう言って頭を撫でると、甘えるように目を閉じる玲奈



この言葉に嘘は微塵もない



『……ところで玲奈さん?』



玲「んー?」



『これ…今日中に終わるんですかね?』



そう言って改めて二人で部屋を見回すと、そこら中に荷物が散乱していた



玲「……ちょっと本格的にやり過ぎちゃった」



『仕方ない、二人で手分けしてやりますかっ』



玲「うんっ」



-数分後



『終わる気がしない……』



玲「……何でこんなに荷物多いの?!

って言うか色んな物、色んな所に詰め込みすぎっ

あとこれっ!また出て来たよ」



『それは……多分ゆりあのかな?』



玲「そんな説明いらないからっ!

って言うかどれだけメンバー来てるの?!」



玲奈がそう言うのも仕方ない……



メンバーの子の荷物が出て来る出て来る……



もう部屋の一角に、返す荷物の山が出来るくらい



って言うかみんなどれだけ忘れ物するの?



これはもう悪意でしょ…百万歩くらい譲れば忘れ物だけど、悪く言うとマーキングだからね?



『週1ペース?』



玲「そんなに来てるの?!

私今日初めて来たのに……」



『拗ねないの

玲奈ならいつでも来ていいから』



玲「ホント?!

なら毎日来るっ」



『え……マジ?』



玲「うんマジ

だっていつでも来ていいんでしょ?

だったら毎日来るっ」



玲奈を見ると本気っぽい表情をしてて、諦めるしかないと思った



と言うより、毎日来るなら……



『いっその事、一緒に住む?』



……他の子とは外で会うようにすればいいや



玲「っへ?!」



この言葉は予想外だったらしく、本気でビックリした顔で勢い良く振り返った



『毎日来るなら、ここに住むのも一緒じゃん

……たまに誰か来るかもだけど』



……玲奈が居ない時に、だけどね



玲「気にしないっ

ありがとう名前ちゃんっ」



『っわ……危ないよー』



抱き付いて来た玲奈を受け止めると、イタズラっぽく微笑まれた



玲「これでもう浮気出来ないね?」



『家で会うのやめるから大丈夫』



さらっとそう言うと、割りと本気で肩を叩かれた



しかもグーで!



玲「浮気禁止っ!

他の子と二人きりで出掛ける時は、買い物以外禁止っ!」



『はいはい

姫の仰せのままに』



玲「もうっ

本当に分かってるの?」



そう言って優しく髪に手を入れると、拗ねたように聞き返してきた



『分かってる

玲奈だけを見るって約束する』



-チュッ



軽くキスすると、顔を真っ赤にして俯く玲奈



"ずっと玲奈の傍に居るよ"



そんな気持ちを込めて玲奈の細い身体をギュッと抱き締めた



『けどやっぱり、たまには他の子と遊ぶのも許してね?』



玲「ヤダ!」



『即答ですか……』



玲「浮気禁止っ!」



『玲奈の魅力を再確認する為だよ』



玲「理由なんてどうでもいいの!

浮気はダメだからね!」



『はーい……』



玲「これからよろしくね?」



膨れっ面の私にふわっと微笑むと、可愛らしく小首を傾げてそう言った



仕方ない……



他の子には申し訳ないけど、私は何より誰より玲奈が好きだから



浮気は今日限り封印します



………期間限定でね
 

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