短編集02

□勘違い
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玲「ホントに?!

ありがとう、楽しみにしてるっ」



楽屋に入ると、玲奈が凄く嬉しそうな顔で珠理奈と話してるところだった



珠「なら明日、10時でいい?」



玲「もちろんだよっ

けどホントにいいの?!」



珠「いいも何も、あたしから誘ったんだし」



明「あれ名前さん?

おはようございます」



『おはよー』



明「…………?

入らないんですか?」



『あ……ごめん、入る』



私が入り口の前に立ってるから、ちゅりも入れなかったみたいだ



明「どうかしたんですか?」



『ん?

あれ、何?』



そう言って玲奈と珠理奈の方を指差すと、ちゅりが説明してくれた



明「あぁ……

何か明日オフがかぶったみたいで、ディズニー行くらしいですよ?」



『二人で?』



明「そうみたいですね」



『ふーん…

ありがとう』



ちゅりの頭をポンポンっとして、椅子に座って雑誌を広げる



優「名前じゃん、おはよう」



『んー、おはようにしし』



優「………それはツッコミ待ち?」



『は?』



何の事だとにししを見ると、苦笑いで私が持っていた雑誌を指差す



優「上下逆だけど……」



『あぁ……』



何事もなかったかの様に上下を戻した



優「玲奈絡みで何かあった?」



『何で玲奈限定なんだよ』



雑誌から目を離さずに適当な感じで、にししに聞き返す



優「名前が動揺してる時は、大抵玲奈絡みだから」



『動揺なんかしてないから』



優「はいはいっ

で、玲奈と何があったの?」



『別に』



優「明日の事でしょ?」



『知ってるなら聞くなよ』



優「いやー、ちょっと面白くて」



『何がだよ』



ここでやっと雑誌から目を離して、チラッとにししを見る



私と目が合うと、ニヤッと笑って



優「名前でも、人並みにヤキモチとか妬くんだなーって思って」



そんな事を言うから、小さく溜め息をついてまた雑誌に目を落とした



『別に玲奈がオフの日に何をしてようと、玲奈の自由じゃん』



優「素直じゃないねーっ

ホントは誘って欲しかったんでしょ?

玲奈が自分じゃない人と二人きりで出掛けるのが嫌だって、素直に言えばいいのに」



『別に嫌じゃないし』



優「ホント素直じゃないねー

そんなんだと、そのうち他の人に取られるよ?」



『ふーん……』



優「ふーんって……

気持ちは口に出さないと伝わらないんだよ?」



『分かってる』



"ホントに分かってんのかねー"なんて言いながら、にししがどこかに行ってしまった



言葉にしないと伝わらない事なんて、そんなの人から言われなくても分かってる



けどどう伝えていいかとか、面倒くさい奴だと思われないかとか、そんな事を考えるとどうしても伝えられない



それ以前に友達と遊びに行くのを、止める権利なんて私にはない……



けど、それでも



『………嫌だ』



玲「何が?」



呟いた言葉を聞かれてた事と、玲奈が急に隣に来た事に内心凄くビックリした



『何でもない』



けどそんなの欠片も外には出さずに、雑誌を見ながら答えた



って言うかさっきからずっとこの雑誌見てるけど、一行も読んでないな……



玲「名前ちゃん明日お仕事だよね?」



『うん』



玲「一緒じゃないのは残念だけど…頑張ってねっ」



そう言ってフワっと微笑む玲奈は、やっぱり可愛い



そうだ、ちょっと意地悪でもしてやろうか……



『玲奈は明日オフだったよね?

私昼までだから、久しぶりに二人でどっか行く?』



玲「ごめんね名前ちゃん……

私明日、急に東京でお仕事入っちゃったの……」



嘘ついた………



何でだよ………



『そっか、それは残念だね』



玲「うん…ごめんね?

今度オフが重なった時は、絶対にどこかお出掛けしよう?」



『うん……

………今度があればね…』



玲「あれ、どこか行くの?」



持ってた雑誌をパタンと閉じて、席を立つ私の袖をそっと握って聞いてきた



『トイレ』



玲「すぐ帰って来てね?」



上目遣いでそう言う玲奈



いつもなら可愛いなって頭を撫でる所なんだけど、今日は違う



『トイレから帰ったら、すぐに着替えるから』



素っ気なく答えて、袖を握る玲奈の手なんか気にせずその場を後にした
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