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□月夜
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今日の依頼の報酬は、かなり良かった。
いつもは寒い懐が、たんまり温まったという事で、新八・神楽・お妙と外食。
それから、三人と別れ一人居酒屋へ。
しこたま飲んだあと機嫌よく店を出た。
今日はいい日だったと、居酒屋からの帰り道思わず笑みが溢れた。
ふと見上げれば、まんまるの月。
「ほぅ。こりゃ見事な満月じゃねぇーの…」
立ち止まって空を見上げた。
そう言えばと、ふと昔を思い出した。
あいつ。かつて共に戦ったが、今は大きく道を違えた、あの馬鹿野郎。
高杉とよく、月を見ながら酒を飲んだなと懐かしくなった。
あの頃はまだ、高杉の心も見えていた。
自分を大切に想ってくれていたのも分っていたし、それに応えたいと思ったからこそ、身体も重ねた。
しかし、どんどん高杉の心は病んでいった。
自分の存在が高杉を駄目にしていると、それが一番辛かった。
だから離れる事にしたのだ。
なのに…
「おりゃあ、選択を間違えたのかねぇ…」
銀時が全てだった男は、それを失うことによってさらに病んでしまった。
お互いの道が、決して交わらないところまで。
それでも男の身を案じずにはいられない。
できれば今度こそ、その手を離したくない。
まだ自分を、必要だと思っていてくれるのなら。
「…バカか、俺は。そんな事、ありゃしねぇってのによ…」
一人ごちて、孤独に輝く月をしばらく眺めていた。
高杉も、この月を見ながら自分を思い出してくれたらいいなと、
そう願いながらーーー
END