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□心様へ
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十年先も二十年先も





見慣れねぇ男が上等な酒持参で、俺達が拠点にしている寺跡地に来たのは、昨日の話だ。
その男は陽気な野郎で、初対面にも関わらず俺達と打ち解け、杯を交わした。

時折、銀時を見るその男の視線が気になったが、別に命を狙ってる訳でも無さそうだし、害はなかったから放っておいた。
銀時に見とれる奴ぁ其処ら中にいるが、この男はそう言うんじゃねぇ。
あれは懐かしむ目だ。
銀時を、懐かしんでいる…?
可笑しな話だな。俺と銀時は幼少時から今に至るまで、ずっと一緒だ。
あの男が銀時の知り合いならば、俺も知っている筈だ。

だが、俺は知らない。

朝起きたらあの男の姿は何処にもなかった。
上等な酒に酔いしれ、思う存分宴を楽しんだ同志達は未だに鼾をかき、寝こけている。
起きているのは、俺と銀時、ヅラと辰馬だけだ。

「なぁ、高杉。俺、昨日の男と知り合いじゃねぇーよな?」
頭に手をやり、俺に問う銀時もあの男の視線が気になったようだ。
「だと思うが…てめぇも気付いてたんだなぁ、銀時ィ」
「まぁ、ね。あの男の俺を見る目…何か気になっちまってな」

妙な胸騒ぎを覚えながらも、四人でその辺を探すことにした。
あの男の話を聞くためにーーー

****

天人の咆哮に爆撃の音、それらに混じって漂ってくる血と火薬の匂い。
俺達がその場に駆けつけると、天人の大群に混じって見知らぬ人間どもの姿が見えた。
攘夷志士でもなければ、見知った奴等でもねぇ。
男も女も何故か天人どもと戦っている。

「なんだ?あやつ等は」
桂が首を捻る。
「さぁなぁ」
天人を倒してくれてるのは、まぁ正直なところ、ありがてぇからな。
人は多ければ多い方がいい。
「おっ!彼処に昨日の男がおるぜよ!」
辰馬が指差す先には、確かに昨日の男がいる。何の真似か銀時の格好をしているが…一体…?

「彼処にいんの、ヅラじゃね!?何でお前、彼処にいんの!?銀さん意味わかんないんだけど?」
銀時の驚きは当然だ。
格好や年齢は少々違えど、あれは間違いなくヅラだ。
「ヅラじゃない、桂だ。…しかし、どうなってるんだ…これは」
「おいおい…マジかよ…。俺も、いる?」

その前方に、見慣れた銀髪を見つけた。
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