赤い涙**
□VI
1ページ/2ページ
その頃シエル達一行はーーーーーーーーー
「さて…まずはドルイット子爵を見つけなくてはいけませんね」
会場に来たはいいが、まだ目的の子爵を見つけ出せてはいなかった
「ドルイット子爵ってのはいい男なのかしら?それによってはヤル気に差が出るわ〜!!」
「苦しい重い服が痛い足が帰りたい」
顔面蒼白にしながらブツブツと呟くシエルとは裏腹に、マダム達は目を光らせて笑っていた
ずーん…と暗い雰囲気を漂わせながら、ズルズルとドレスを引きずっている
「坊ちゃん、気を確かに」
「黙れセバスチャン………こんな姿、絶対にレイラやエリザベスには見られたくないな…」
脳裏にきゃーきゃーと騒ぐエリザベスと、この姿を見て大爆笑するレイラを思い浮かばせながらシエルは力なく呟いた
「きゃーっそのドレスかわいーっ」
「静かにしなさいエリザベス」
「そのヘッドドレスもステキーッ」
「私、あっちのケーキ取ってくるわね」
「いかん…幻聴ま…で……」
セバスチャンとシエルの顔色が一気に青ざめていく
まさか!!と、2人がバッと後ろを見てみれば
「ステキなドレスの人がいーっぱい♡かわいーっ♡ねえ、レイラも見てよお!」
「そうねえ、可愛いわね。…あ、あっちのチョコレートケーキ美味しそう…」
華やかに着飾った貴族令嬢達とニコニコと話しているエリザベスと、大きな口でケーキを頬張るレイラの姿があった
「セッ…セセセセバスチャン」
「坊っ…お嬢様落ち着いてください。とりあえずあちらへ」
悪夢だろうか
今一番会いたくない二人を目の当たりにし、あたふたするシエル
セバスチャンも少し動揺している様子で、急いでシエルの手を引いてその場を離れようとした…が
「あっ♡」
エリザベスが可愛いドレスを身に纏った美少女ーー
の、姿をしたシエルを見逃すわけがない
早速シエルに目をつける
「あそこにいる子のドレスすっごくかわいーっ♡」
「「!!!!!」」
ビクッと肩を揺らし、シエル達はすぐさま逃走を測る
「いけませんお嬢様、こちらへ」
ザワザワと賑わう人混みを上手く利用し、エリザベスを捲く
「あら?あの子どこいっちゃったのかしら…」
「はあ…どうして私がこんな目に…」
レイラは大量に皿に盛られたケーキを食べながらうんざりと呟く
(予定が狂った…とりあえず早くマダム達を見つけなきゃ…)
誰かを探してキョロキョロしておるリジーを横目に、レイラは神妙な顔つきで考える
「なんであいつがこんな所にいる!とにかくマダム達に…」
シエルがテーブルの陰に隠れながらマダムのいる方を見てみれば、マダムは群がる貴族達に囲まれて高らかに笑っている
完璧にパーティーを満喫している彼女に頼ってはいずれ見つかってしまう
「まずいですね、まさかエリザベス様がいらしているとは。…そしてその横にはレイラ様もいらっしゃいますし」
「いくら変装してたって顔を合わせれば…」
「バレますね」
「あいつらにバレたら調査どころじゃなくなるぞ!」
「それどころか、ここにいる皆さんお嬢様が「坊ちゃん」である事がバレるでしょうね」
セバスチャンがけろっそう言うと、シエルはただでさえ青い顔をさらに真っ青にした
そしてテーブルのシーツを握り震えた声で叫ぶ
「当主がこんな格好してるなんてバレたらファントムハイヴ家末代までの恥だっ!!それにレイラになんてバカにされるか…!!」