赤い涙**

□IV
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ー切り裂きジャック編ー






















「手紙の内容を拝見しましたが…まずはヤードの方に向かうのが妥当では?」


首都に向かう馬車に揺られながら、シャルロットは呑気にクッキーにかじりついているレイラに尋ねる


「いや、まずはタウンハウスに向かう」

「タウンハウス…?クレイトン家のタウンハウスはこちらではありませんが…」


シャルロットが訝しげに眉を潜めると、レイラはニヤリと笑う





「誰も"クレイトン家"の屋敷とは言ってないわよ。」

イタズラっぽく口角を上げる主人を見て、「そういうことか…」とシャルロットは苦笑いを漏らす






「"女王の番犬"はもう既に動き始めてるみたいだし…まずはそこから当たるのが手っとり早いでしょう?」










送られてきた手紙を見つめながら、レイラはまたクッキーに手を伸ばした





******




キキキーッと音を鳴らしながら馬車が止まる。
運転手が扉を開くと、レイラの手を取りゆっくりと地面へと降ろす。



レイラが降りた先にあるのは、ファントムハイヴの家紋が黒く刻まれた門



「他にも馬車が2台ほど止まってますね。先客でしょうか」


「さあ…ま、入ってみればわかるでしょ」


レイラは躊躇いもなく門を開くと、ズカズカと屋敷へと入っていく





「お邪魔するわよ、シエーーーーーーーー………」


屋敷の中に入ると、中はひどい有様だった




「あら、レイラじゃない」

「マダムレッド…何してるの」


中には真っ赤な服を身に纏った貴婦人ーー
マダムレッドと中華服の男、ラウが部屋をめちゃくちゃにしていた。


「やあ公爵。久しぶり」




「一体何をどうすれば屋敷をこんなにできるの…」

呆れ気味にそう言うと、レイラは荒れた部屋を見渡した。



「お茶を探してたのよ。でもどこにもなくて困ってたのよねえ」

「そうそう」


ポイポイと物を棚から放り投げる2人
シエルがこれを見れば驚くだろうな…と思いながらため息をつく




「他人の家を荒らすのは感心しないわね。まあ、アイツの屋敷だから構わないけど」



「何をしている…」



噂をすれば影
遅れてシエルとセバスチャンも部屋に入ってきた。


「あら、早かったじゃない、シエル」

「マダムレッド⁉︎ラウ⁉︎なぜここに‼︎」

部屋の有様を見てシエルが青ざめながらマダム達に尋ねる。


「可愛い甥っ子がロンドンにくるっていうから顔を見に来てあげたんじゃない」

「我は何か面白そうなことがあると風の噂で聞いたものでね」







「…お前も来ているとはな」


なぜここに?と言いたげな顔のシエルに、レイラは懐から出した一通の手紙を見せる



「陛下からよ。貴方もでしょう?」

手紙を見せられたシエルは一瞬ムッとした表情を見せたが、すぐに諦めたようにため息をついた。




「これはこれはお客様をお迎えもせず申し訳ありません。すぐお茶の用意を致しますので少々お待ちください」
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