枯れるまで愛して**


□テストの時間2
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ザワザワとした変な胸騒ぎがし、愛は落ち着かない気持ちで、テストが返却されるのを待っていた。

ここ椚ヶ丘中学ではテストが返却された後に、学年の総合順位が上位50名まで廊下に張り出される。



(なんか落ち着かない…嫌な予感がする…)

気づけば、いつも隣で寝ているカルマの姿もない

「愛ちゃん、カルマ君いないね。どうしたのかな」

隣から渚が小声で尋ねてくる

「さあ…どうせアイツのことだからどっかでサボって寝てるんじゃない?」

愛が肩をすくめながらそう言うと、渚はそうかもね、と苦笑いしながら頷いた

カルマはいつも面倒臭い授業などはサボってどこかで寝ている

今日は珍しく朝から姿を見ていない。
欠席欄に名前がないところを見る限り、サボっていることは誰にでもわかる












「それでは、テストの返却をする。名前の呼ばれたものから前に出て来い」


担任が封筒を開け、それぞれにテストを返し始める。



「また赤羽はいないのか!一体何を考えているんだあいつは!」

担任の男教師がカルマに対して怒る。
以前からサボり癖のある彼に注意を続けているが、一向に治る気配もないので困り果てているらしい



(確かあいつも結構成績いいって聞くけど…どれくらいできるんだろう)



勝負しよう、と言ってきたのだ。それなりに自信があるのだろう

色々と謎の多いカルマに、愛は妙に不安のなりながらテストの返却を待った。

「西森。」

「はい」

自分の名前が呼ばれ、愛は立ち上がって教卓の前へと行く



「今回のテストもいい結果だしたな!西森。これからも期待してるぞ。お前ならA組に行っても問題なさそうだ」

担任はやたらニコニコしながら愛にテストを返す。



A組という名前に、クラス全体がザワッとどよめいた

A組はこの学校で優秀な上位成績者だけが入れるエリートクラスだ。入れる者は極少なく、この学校でA組は皆の尊敬の的なのである


「…どうも」

人の上に立ちたい、などの欲がない愛はそんなことに微塵の興味もないのだが




「…うーん」

返却されたテストの結果はこうだ

国語97点
数学100点
理科100点
社会99点
英語96点


全国でも有数のエリート進学校である椚ヶ丘中のテストはやはり難易度が高い。

高得点を叩き出している愛に、周りのクラスメートは尊敬や憧れの眼差しを向けている

が、当の本人はどこか不満そうだ


(これじゃあ今回も一位は無理か…浅野学秀、だったっけ。あの人はほとんど満点みたいなものだし、まだまだ足りない)




「すごいね愛ちゃん、高得点ばっかり…」

隣から渚が感心の声をあげていた

「うん…ありがとう」

「愛ちゃんが羨ましいよ…僕なんて全然良くなかったから」


返却された答案を見て渚がため息をつく

「今度一緒に勉強会しよっか、渚君」

「え、いいの?」


パアッと顔をほころばせる渚に、愛は微笑む

「うん。確か渚君理科苦手だったよね。私得意科目だから教えれるし」

「助かるなあ。じゃあ今度またどこかでお茶でもしながら」



うん、と愛が頷くと、突然ガラガラッと教室のドアが開いた。





「赤羽‼︎‼︎お前は一体どこに行ってたんだ‼︎」


担任の怒鳴り声
愛はピクッと反応し、ドアの方を向く




「あはは、ごめんごめん先生。」

ヘラヘラと笑いながら教室に入ってくるカルマ

愛はカルマの顔を見るやすぐに顔を背けた



「今日くらいは真面目にーーーーーー「はいはいわかったよ先生。俺のテスト、早く返してよ」

「お前な!」

担任と小競り合いになっているカルマ

そんな様子を横目で伺っている愛だったが、ふとこちらに目を向けたカルマとばっちり目が合ってしまう



「!」

急いで目をそらしたが、きっと今彼はニヤニヤと笑っているはずだ


きっと側にいたら、今俺のこと見つめてたでしょ?、と得意げに言ってきただろう
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