ヒソカトリップ夢(完結済み)

□一次試験
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意識を取り戻した時、目の前にはあの定食屋があった。
自分の格好を確認すると、黒のチュニックに黒の綿パン、黒のブーツと全身黒尽くめ。まるでカラスの様だ。しまいには、腰にホルスターが有り、重量感のあるモデルガンも収納されていた。

昼時でもないのに、目の前の定食屋には絶えず人々が出入りしている。中には肩を落として定食屋から出てくる人も居た。
ものは試しとばかりに定食屋【ごはん】へ入ってみる。
「いらっしぇーい!!ご注文は?」
「ステーキ定食を弱火でじっくり」
店主がピクリと反応し、店員のお姉さんに奥へと案内される。どうやら、ハンター試験開始日に飛ばされていたらしい。
案内された部屋にはステーキが焼けるいい匂いが漂っている。この後走らせられることを考えたら、食べるのは無理だ。
椅子に座ってこれからのことを考えると、地下100階に着いた事を知らせる音がして扉が開いた。
開いた扉から一歩外に出ると、すでに集まっている受験生から冷たい視線を浴びせられた。
ビーンズから渡された番号札には【406】の番号。ゴン達の後に入ったことになる。
「ぎゃあぁ〜〜〜っ」
男の悲鳴に視線を向けると、ヒソカがいた。
「アーラ不思議♥腕が消えちゃった♠タネも仕掛けもございません♠」
「おオ…………オ……オオレのォォ〜〜〜」
「気をつけようね♦人にぶつかったら謝らなくちゃ♣」
(ぶつかったくらいで両腕を切り落とす方もどうかと思うよ)
ふと地下道の天井に目を向けると、切り落とされた男の腕が天井近くにぶら下がっている。
((モデルガンであの腕を撃て))
頭の中に声が響いた。あの【神】と名乗った少年の声だ。
声に従い、身体が自然とモデルガンを構えて天井付近の腕を撃った。
((【気まぐれな弾丸(アルケミー)】、モデルガンを使ったキミの能力だ。物質や敵意のある者には攻撃、信頼されている者には回復効果のある弾丸が発射される。ただし、回復効果には制限がある。))
少年の声を聞きながら、落ちてきた男の腕を持ち、ビーンズの所へ行く。
「あの人、今ならまだ間に合うと思うからコレ預けるね」
「あ……はい」
その様子を遠くから見ていたヒソカはクツクツと笑っていた。
(面白いコ発見♥後で遊んで貰おうかな♠)

《ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリ》
「ただ今をもって受付時間を終了いたします。では、これよりハンター試験を開始いたします。こちらへどうぞ」
地下道のパイプからふわりと降りてきたサトツ。
「さて、一応確認いたしますが、ハンター試験は大変厳しいものもあり運が悪かったり、実力が乏しかったりするとケガしたり、死んだりします。先程のように、受験生同士の争いで再起不能になる場合も多々ございます。それでも構わない――という方のみ、ついて来て下さい」
そう告げるとサトツはゆっくりと歩き出した。それに続き、集まった受験生は皆サトツの後をついて移動し始める。
「承知しました。第一次試験405名、全員参加ですね」
段々とペースを上げて歩くサトツ。
周りも気付いたのか、早歩きから段々と走り出している。ナマエも荷物の中にあったMP3プレイヤーで音楽を聴きながら走る。
(疲れない。息切れもしない。やっぱ頼んでおいて良かったな)
「申し遅れましたが、私一次試験担当官のサトツと申します。これより皆様を二次試験会場へ案内いたします」
周りが完全に走りだした頃、受験生の一人:ハンゾーがサトツに質問した。
「二次……?って事は一次は?」
「もう始まっているのでございます。二次試験会場まで、私について来ること。これが一次試験でございます。場所や到着時刻はお応えできません。ただ私について来ていただきます」
音楽を聴いているにもかかわらず、後ろが何やら騒がしい。主人公組が合流し、楽しそうに話している頃合いか。

スピードを早め先頭集団に紛れ込む。
やがて、目の前には階段が現れた。
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