ヒソカ夢

□四次試験
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トリックタワーを出たら、そこは森の中にある崖の上だった。
「諸君、タワー脱出おめでとう。残る試験は四次試験と最終試験のみ。四次試験はゼビル島にて行われる。では早速だが――」
三次試験の試験官が指を鳴らすと、助手の男が何かの機械をガラガラという音をさせながら持って来た。
「これからクジを引いて貰う」
「クジ……?」
「これで一体何を決めるんだ?」
「このクジで決定するのは、狩る者と狩られる者。この中には25枚のナンバーカード、すなわち今残っている諸君らの受験番号が入っている。今から1枚ずつ引いて貰う。それでは、タワーを脱出した順にクジを引いて貰おう」
最初にヒソカが引きに行き、引き終わった所で入れ替わりでナマエが引きに行った。

「全員引き終わったね。今諸君がそれぞれ何番のカードを引いたのかは、全てこの機械に記憶されている。従って、もうそのカードは各自自由に処分して貰って結構。それぞれのカードに示された番号の受験生が、それぞれの獲物だ」
試験官の説明に、受験生は息を飲んだ。
「奪うのは獲物のナンバープレート。自分の獲物となる受験生のナンバープレートは3点。自分自信のナンバープレートも3点。それ以外のナンバープレートは1点。最終試験に進む為に必要な点数は、6点。ゼビル島での滞在期間中に、6点分のナンバープレートを集める事」
ナマエは自身の引いたクジを見て唖然とした。クジには43の文字、すなわち自分の番号が書かれていたからだ。
「試験官、質問!」
「何だね?」
「万が一、自分の番号を引いた場合は?」
「その場合、既に6点分のポイントを持っている事になる。従って、他の受験生から自身のナンバープレートを守り抜く事が必要となる」
「りょーかい……」
「他に質問は無いかね?無ければ船に乗り込み給え」

《ご乗船の皆様、第三次試験お疲れ様でした!!当船はこれより、2時間程の予定でゼビル島へ向かいます。ここに残った25名の方々には、来年の試験会場無条件招待権が与えられます。例え今年受からなくても、気を落とさずに来年また挑戦して下さいねっ》
案内係が説明するも、ほとんどの受験生が四次試験への不安で沈んでいた。
狩る者と狩られる者。心理的負担は計り知れない試験だ。
《それではこれからの2時間は自由時間になります。皆さん、船の旅をお楽しみ下さいね!》
案内係が引っ込むと、ナマエは人があまりいない甲板へと足を向けた。風が心地良い。そんな事を思っていると、不意に後ろから抱き締められた。
「何?ヒソカ」
「ご褒美貰おうと思って♥」
「あぁ……アレね。あげるから、離して。ついでに屈んで」
ヒソカがナマエの言う通りにすると、ナマエはヒソカの首に腕を回し、唇にキスをした。啄む様に何度か繰り返していると、突然ヒソカがナマエの唇を甘噛した。その行動にとっさに離れようとするも、頭を固定されていて逃げられない。抗議しようと口を開いた瞬間、ヒソカがナマエの口内に舌を侵入させてきた。
「んっ……」
「……ナマエ♥」
「……やっ」
口内を蹂躙してくるヒソカの舌に、ナマエは懸命に逃げようと試みるも無駄に終わった。
執拗に絡めてくる舌を噛んでやろうかとも一瞬思ったのは事実。
だが、今はこの男に酔い痴れていたいと思っているのも事実。
どうする事も出来なくなり、ナマエはヒソカにその身を委ねた。

やがて満足したのか、ヒソカはリップ音を響かせながらナマエの唇から離れた。鼻先を合わせる様な距離でナマエを見つめ、困った様に微笑むヒソカ。
「怒ったかい?」
「怒ってないよ。でも……」
「でも?」
「ビックリした」
視線を合わせずに呟くナマエに、ヒソカは愛しさが込み上げてきた。
ナマエを抱き締め直し、床に座るヒソカ。
ナマエはその行動に何も言わずに、黙ってヒソカの胸に凭れ掛かっている。
「ヒソカの音がする」
「ボクの音?」
「うん。何か落ち着く」
「そう♠」
ヒソカの心音が服越しに聞こえてくる、トクントクンと波打つ鼓動。ヒソカが生きて、確かに此処にいると証明してくれる音。それが妙に心地良く聞こえる。ナマエは目を閉じて、その音に聞き入っていた。

《それでは、三次試験の通過時間の早い人から順に下船して頂きます!1人が上陸してから2分後に次の人がスタートする方式を取ります!!滞在期限はちょうど1週間!!その間に6点分のプレートを集めて、またこの場所に戻って来て下さい》
ゼビル島へ到着し、案内係が試験内容の説明をした。
ここの島では単純に狩りをしろ、という事なのか試験官は見当たらない。その代わり、森の中に受験生と同じ人数の気配が散らばっていた。
《それでは、1番の方スタート!!》
「♣」
まずはヒソカがスタートし、目の前の森の中へ姿を消した。森の中にいた気配の1つが、ヒソカと共に移動したのが判る。
《2番スタート》
自分の番になったナマエは、ヒソカが消えたのとは別方向へと足を進めた。
感じていた気配が、間隔を保ってついてくる。
それを確認し、走ってみるも撒けない。
どうやら、監視役のようである。
監視されるのは気分が良い物ではない。
そう思い、試験が始まって以来初めて【絶】を使う事にしたナマエ。
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