進撃夢(完)

□疾走
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◇◇◇

「おい!そこの兵士さんはガス切れか?」

俺は真っ青な顔色をした兵士に声をかける。
涙に濡れた顔。
震える足。

でも、優しくしたりしねぇぞ。

俺はそいつの顔面を思いっきり殴り飛ばした。
「おい!答えろ!!」
やっと意識が戻ってきたのか、兵士はノロノロと立ち上がった。
「ガ、ガスが…」
まだ戦闘が始まってそんなに経っていないはずだ。それでガス欠とはどういうことだ。
まぁ、今はそんなことどうでもいいか。
俺は360度見渡し、遠くを見据える。
「おい新兵。今から俺が言うことをよく聞け。お前の行動に市民の命がかかってる」
「命…?」
「そうだ。いいか、この通りをまっすぐ走れ。200メートル進んだら小さな花屋が右手に見えてくる。左に曲がって立ち止まれ。15秒数えたら右に向かって全速力。巨人がいるが気にするな。そのまま行って100メートルくらいの位置でさらに20秒待て。そうしたら大通りに向かってまっすぐ走れ。そうすれば非難門に繋がる」
兵士は状況が呑み込めていないようだが関係ない。
「その区間に逃げ遅れた住民が何人かいるはずだ。そいつらを残らず回収しろ」
「え、あの」
今度は平手をお見舞いする。
「やらなきゃ死ぬだけだ。お前が死ぬだけじゃない。市民が死ぬぞ」
その言葉に、少し瞳に力が入った。
俺はぐっと兵士の肩を掴む。
「お前は兵士だ。この状況で市民の命を考えられる。なにがあってもためらうな!行け!!」
兵士は走り出した。大丈夫。途中にいる3人は助かるだろう。
「さて、次だ」
俺はまた走り出す。




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