企画

□この夜を二人で
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時は12月24日。日付けがあと数分で変わる。鍵を閉めに地下室にやって来たリヴァイが、ベッドに座ったエレンに「話をしませんか?」と上目遣いでねだられ、「結婚しよ」と思いながらも素直になれずに「ちっ、しょうがねぇな」とエレンの横に腰をおろし数分が経過した頃。
エレンは目に見えてソワソワしていた。
あまりのソワソワ具合に、残像でも出るんじゃないかと思うとリヴァイはエレンから目が離せなかった。そして「話をしませんか」と誘ったくせにエレンはなにもしゃべらない。いや、なにかを言おうとして、そしてそれを途中で止めるのだ。さすがのリヴァイも残像よりもエレンのその行動の方が気になり始め、なんなんだとため息をつきたくなった。
「エレンよ」
「なんですか?」
「話があんじゃねぇのか」
「まだです」
「あ?」
「まだ駄目です。でも、もうすぐよくなります」
「なんだそれは」
埒が明かないとリヴァイがベッドから立ち上がったとき、エレンが裾を掴む。
「お願いします。あと、一分」
「その一分で何が変わんだ」
「凄く変わります。だから、お願いします」
不安そうにすがるエレンに、リヴァイは舌打ちをしベッドに座り直した。
「一分で帰るからな」
「かまいません」
エレンがリヴァイの手を包み込む。いつもよりも熱いと感じるエレンの熱に、リヴァイは心地よさを覚えた。
そして…
「一分だ。かえ…」
「兵長、お誕生日おめでとうございます!」
エレンがリヴァイの手を掴んだまま嬉しそうにそう告げた。
「誕生…?」
首を傾げるリヴァイに、エレンは満面の笑みで答える。
「ペトラさんたちに聞きました。兵長、今日誕生日なんですよね?一番におめでとうを言いたくて引き留めてしまいました。…兵長?」
リヴァイの反応がないことに心配したのか、エレンが不安そうにリヴァイを覗きこむ。
「誕生日、か…」
今までそういったイベントと関わりがなかったせいか、リヴァイはリアクションの取り方を知らない。しかし、リヴァイのなかにじわりと温かいものが生まれた。
三十路を過ぎたら誕生日なんて関係ないと思っていた。いや、むしろ誕生日なんてリヴァイには関係なかったのだ。今まで誕生日を祝われたことなどなかったのだから。
しかし、エレンは「おめでとう」と言った。
「それから、生まれてきてくれてありがとうございます」
隣に座るリヴァイの身体を包み込み、エレンは恥ずかしげもなく口にした。
「兵長は、人類に与えられた希望です。人類の宝です」
エレンの言葉に、リヴァイは「テメェは頭が足りねぇな」と文句を言った。
「ここは『俺の宝だ』とでも言ってみたらどうだ?」
「そんな!俺なん…か…?」
エレンが言葉を全て紡ぎ終わる前に、リヴァイはエレンをベッドに押し倒した。
「へい、ちょう…?」
眼光が一層鋭くなったリヴァイに、エレンは若干の怯えを滲ませる。
「勿論、プレゼントもあるんだろうな?」
リヴァイはしゅるりとスカーフを解き、見せつけるようにベッドの上に落とした。
「プレ、ゼント…」
「『恋人』の誕生日だ。相当なモンを用意してるんだろうなぁ」

「なぁ、エレンよ」

耳元で囁かれ、エレンはぞくりと背筋を震わせた。
「すみません、なにも…用意してな」
「常套句ってのがあんだろ?さすがのお前でもわかるよな?」
リヴァイの手が、エレンの裾から侵入する。ひやりとした手に、エレンの身体がびくりと跳ねた。
「へいちょ…んっ」
リヴァイがエレンに口付けを落とす。口付けはどんどん深くなり、唾液を混ぜる音が地下室に響いた。
「へ…い…」
「ほら、言えるだろ?」
上体を起こし上唇を舐めながらエレンを見下ろすリヴァイに、エレンはぼーっとした視線を向けたままうわごとのように口にした。
「プレゼント、は…」
ゆっくりと身体を起こし、リヴァイに抱き着いた。そして耳元で何かを囁くと、リヴァイは口角を上げ「気分がいい」とまたエレンをベッドに沈めた。
「あの、へいちょ…」
「お前は俺の下で喘いでればいい」
「きょう…よる、っ…パーティーが…あっ」
「もう黙れ」
「っ…んっ…」
リヴァイは貪るようにエレンを求め、エレンもリヴァイを感じるために必死に手を伸ばした。

リヴァイに早く祝いの言葉を言いたくて城中を探し回ったペトラたちが地下室にたどり着き、エレンの喘ぎ声を聞いてしまったことは、リヴァイ班だけの秘密となった。

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