企画

□ご要望をなんなりと
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アルミンが訓練中に頭を打ったとハンジから聞き、私は慌てて医務室へと向かった。
乱暴にドアを開ければ、エレンとリヴァイがベッドに横たわっているアルミンを見ている。頭には包帯が巻かれ、痛々しい。
「リヴァイ」
「ああ、来たか」と私に視線を向けた。
「立体起動で着地に失敗した仲間をかばって下敷きになったんだと」
「上から降ってきたやつは無傷でした。くそっ、今に見てろ」
「それで、アルミンの容態は?」
リヴァイとエレンが顔を見合わせ「それが…」とエレンが口を開いた。
「ちょっと混乱しているようで」
「混乱…?」
「俺を覚えてなかった」
「…えっ!?」
「自分のことは覚えてました」
記憶障害、と言うことだろうか。エレンを覚えていてリヴァイを覚えていないということは、一定の時期以降の記憶に障害が出ている可能性がある。
「ちなみに、エルヴィンのことも覚えていなかった」
「…聞いたのかい?」
もしかしたら恋人である自分のことは覚えていてもらえているんじゃないかと思ったが、そんな甘い話はないらしい。
「俺じゃねぇ」
ため息をつきながらリヴァイがエレンに視線を向ける。
「だって、恋人のことだったら覚えているかもしれないじゃないですか!」
私が思っていたことを口にしながらふんすふんすと息を荒げるエレン。
起きてすぐに「お前の恋人は男だ!」と言われたアルミンは一体どう思っただろうか。

アルミンに拒絶されたらどうしよう…生きていけない…。

そんなことを思っていたら「う、ん…」とアルミンの声が聞こえた。
「まぁ、エルヴィンが恋人だって話しても拒否反応はないみたいだったからな。そんな悪いことにはならねぇだろ」
「え、行っちゃうの?」
「調査兵団団長ともあろう奴が情けねぇ声だしてんじゃねぇよ。それから、アルミンは記憶の混乱で性格も若干誤差が生じてるみてぇだから気を付けろよ」
「誤差って」
「エレン、行くぞ」
「ちょっと!」
リヴァイに呼ばれ、従順なあの動物のようにエレンは後ろについて行った。
取り残された私はイスに座り、ゆっくりと目を開けたアルミンをじっと見つめる。
「起きたかい?」
天井をぼーっと見つめていたアルミンが私の方に首を動かし視線を向ける。
「貴方は…?」
本当に覚えていないのだと思うと胸がきりりと痛んだが、今はアルミンの方が辛いに決まっている。それに、この痛みは記憶が戻ったアルミンに癒してもらえばいい。
「ああ、エルヴィン・スミスだ。エレンから聞いているだろう?」
「…僕の…恋人?」
「そうだよ」
出来るだけ優しく微笑めば、アルミンはぷいと首を逆に向ける。
「嘘です」
「どうして?」
「貴方みたいな人が、僕の恋人なわけありません」
「だから、どうして?」
「…貴方みたいな素敵な人が、僕なんかを好きになるとは思えません」

……………可愛すぎる!!

リヴァイが言っていた性格の誤差とはこれのことか…!と内心で悶えていると、アルミンは「絶対おかしいです」と頬を膨らませる。




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