進撃夢(完)

□疾走
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◇◇◇

「おい!そこの兵士さんはアンカーの不具合か?」
「あんた…なにやってんだ!逃げろ!!」
おお、こいつはまだ諦めてない。
諦めてはいないが、「ここ」の兵士はもろい。
圧倒的な敵はいけない。いくら持ち直しても心がすぐに折られちまう。
せめて、勝機があればもっと心も強くなるんだろうがな。
それにしてもなんだ、印象に残る馬面だな。
「この状況で逃げろって言われてもなぁ。いいか、言うことを聞いてくれ。あんたが言うことを聞いてくれれば俺はその分早く避難できる」
門はそろそろ閉じる頃か…その前に。
腕を引っ張り、民家に逃げ込む。
「おい、なにやってんだ、気付かれるぞ!」
「しっ、静かに」
馬面兵士の口を押えて、俺は近付いてきた足音に耳を澄ませる。
呼吸を浅く、ペースは遅く。
近付いてきた足音は、どんどん遠のいていく。
呼吸のペースを戻し、馬面兵士の口を開放する。
「どういうことだ…?」
「ラッキーだったな。隠れてみるもんだ」
相当不審な目で見られている。バカなことを言ったかな。
「まずはこの建物を出て…」

こいつは対応能力が高い。説明するのに時間はかからなかった。
「よし、できるな」
「…あんたなにもんだ?」
その問いに、俺は笑いながら答えた。
「ただの八百屋の下働きだよ!ほら、行った行った!!」
さて、そろそろ動き回るのも危なさそうだ。
「行く、か…」
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