北斗
□依存兄弟
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核により崩壊した世界。
散り散りになった兄弟の一人に会ったのは
何とも奇妙な運命だった。
「ジャギ様 ! 」
扉を開けた部下は、少し焦った表情で
部屋に入ってきた。
「あぁん、なんだ」
「偵察部隊が、不思議な男を捕まえたとのことで」
「はぁ ? 食いもんでも持ってたか」
「いえ。むしろ死にかけで…」
「馬鹿かオメェら!死人なんぞ拾ってくんな!」
「いやあの、それが、」
「あぁ ? 」
「部下がかなりやられまして…」
「おいおい、死にかけじゃねぇのかよ」
「死にかけです。スゴくやつれてて。
けど足技がハンパなくてどうにも…」
「わーったよ、行きゃいいんだろ…」
ため息をついて、愛用のショットガンをセットして
部下の後を追った。
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話によるとソイツは、いくら攻撃しても足でしかやり返さないという。
確かに現場に行けば、かなりの部下たちが
地面にのびていた。
「情けねぇなぁ…」
のびた部下たちの中央に立つ者が一人。
向かって歩いて行くと、奴は俺に背を向けて
遠くを眺めているようだった。
「テメェかぁ、うちの部下倒したのはぁ」
言いながら近付いていく。
白髪に白い衣服。腕に包帯を巻き、
何処かで見たことのある風貌だ。
「んん ? お前何処かで見た気が…」
「懐かしいね、元気だったかい ? 」
言いながら振り向いたのは、
我が兄、トキだった。
「あ、兄者 !! 何でここに!」
「え、ジャギ様のお兄様でしたか !! 」
後ろで驚く部下たちを余所に、
俺は兄者に近づいて行った。
「何でこんなとこに居んだよ」
「色々あってね… あぐっ」
突然口から真っ赤なモノを吐き出した。
勢いよく出たソレは俺の腕に飛び散り、
そのまま倒れ込む兄者を訳も分からず抱き止めた。
背中にまわした手を見ると
真っ赤な血が付いていた。
「おい兄者、大丈夫かよ!」
「ハハハ、平気さ… ジャギには話しとこうかな」
「な、何をだよ」
兄者は動揺する俺の腕に耳元に優しく囁いた。
「私、もう腕が使えないんだ」
膝をついた。
肩には兄者の頭があり、耳元には兄者の口がある。
頭の中を駆け回り続ける言葉。
俺はこの時初めて、悪魔を呪った。