北斗

□He is She .
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ー2日目 朝ー



その日アミバは、ゴソゴソと何かが自分の布団の上を這いずる音で目を覚ました。寝惚けたまま 丁度腹の辺りが重いのを感じる。なんだこりゃ…。

「おいコラ 起きろ」
「ん…」
「てめぇ 起きろって」

誰かに呼ばれている。夢か?だって俺は独り暮らし…。すると突然、投げ出したままの腕を捕まれ 勢いよく引っ張られた。その勢いと急に引っ張られて力が入らなかったので アミバはそのまま上半身を起こされざるえなかった。そして、目の前に女がいた。

「うおっ」
「うおっじゃねぇよ」
「……あ ジャギか」

ため息が出た。

「おいっ 人の顔見てため息つくんじゃねぇ ! 」

ギャンギャン喚くジャギ(♀)は朝から元気そうだ。昨日は急に女の身体になって少し焦りぎみで アミバの知る限りろくに眠れなさそうだったのに。

「起きるの早くないか… ? 」

そう言ってアミバは近くに置いていた目覚まし時計に目をやった。いつもなら まだ夢の中の時間帯だ。

「そうか ? 今道場行けばみんな朝稽古してるぞ」
「うっ… すげぇな…。しかしお前、眠れたのか」
「あぁ、まあな」

そう言ったジャギの目元に 薄く隈があるのをアミバは見逃さなかった。強がるジャギは 自分の顔を真剣に見つめてくるアミバに首をかしげる。アミバはジャギの目元を指でなぞった。

「……てめぇ 発情期か ? 」
「…いや」

怪訝そうに見つめ返すジャギに全く感じないとは言えなかった。昨日から急に居座ることになったジャギは、当たり前だが女物の着替えは何もなく 仕方なくアミバの衣服を借りていた。

「でけぇなー」

言いながら借りたTシャツを着る。ジャギがアミバの服を着ると、裾が膝上まで伸び 襟元は少し肩が出るくらい。お世辞にも丁度良いとは言えない。

「てかよぉ、お前ってそんなにでかかったんだな」
「まあな。ジャギの方が筋肉付いてるイメージだが 背丈は俺の方が高いぞ。下はどうするんだ」
「何か貸せよ」
「下着もか」
「大丈夫だって。短パン位にはなるだろ」

昨晩そんな会話をした後、ジャギは本当にアミバのボクサーパンツを穿いたまま 今に至る。ユルいTシャツの裾から覗くボクサーパンツ。それだけでも充分なのに、そんな格好の女が自分を馬乗りにしている。決してマゾ的欲望は無いにしろ、少なからず燃えない男はいないだろう。

「おーい まだ寝てんのか」
「なっ なんだ」

自分の世界に旅立っていたアミバをジャギが軽いビンタで引き戻す。

「もう何でもいいからよ、飯食いたい」

腹を擦りながら言った。コイツは…。

「居候のくせに飯までねだるか…」
「あぁん ? 」
「飯くらい作れ。むしろこの俺様に振る舞え」

アミバの上からの物言いにカチンときたジャギは言い返す。

「てめぇ、誰に物言ってんだ」
「貴様こそ、家主は俺様だぞ」

睨み合う二人。するとジャギが突然 アミバの首に腕を回した。密着したジャギの身体に アミバはビクッと身体を跳ねらせる。

「ぬぁっ !! 何をするのだ ! 」
「ねぇ 作 っ て ? 」

アミバの耳元に顔を近付けたジャギは、鼻に掛けた甘ったるい女の声で言った。

「うわわわわやめろぉおお 寒気がした !! 」
「作ってよ〜」
「やめろぉおおおお」

あからさまなアミバの反応に、調子に乗ったジャギは耳に息を吹き掛けた。ゾクリと身震いをしたアミバは、咄嗟にジャギの身体を引き離そうと 二人の間に手を入れてジャギの身体を押した。

「あっ」

不意に生々しい女の声が聞こえた。アミバが自分の手の位置を見ると、ジャギのたわわな胸をしっかり掴んでいた。そのまま顔を上げると 赤面したジャギが アミバの手を見つめてる。

「…あれ ? 」

何なんだこの展開は。どう説明すればいいんだ。てか柔らかいな。いや、何を考えているのだ俺は。それにしても触り心地が。悶々と思考を巡らすアミバを他所に、ジャギの頭の中は真っ白だった。

「…………」
「ジ ジャギ、スススススマン」

ようやく手を離すと アミバが口ごもりながら謝る。その言葉で我に返ったジャギは、アミバの秘孔を思いっきり突いた。

「さっさささ触んじゃねぇバカ野郎 !! 」
「ぐぁあああっ」



+++++


苦しむアミバを置いて ジャギは部屋から出た。その顔はまだ火照っている。

「なっ何なんだ今のは… !! 」

自分でも驚く位生娘な反応をしてしまった。あんな可愛らしい声を まさか自ら発する時が来るとは。先程の出来事を思い出し 頭をブンブン振る。後で会ったら もう一回突いてやると心に誓う。そんなジャギの心が少しずつ変わり始めていくのを 本人は気付いていなかった。




+++++


「ぐぅっ……」

強力な秘孔をお見舞いされたアミバは やっとの思いで自ら痛みを和らげる秘孔を突き、ベッドの上でへばっていた。ジャギが出て行った扉は虚しく開いたままである。

「…………はぁ」

名残惜しそうにため息をついて、少しジンジンする耳に触れる。目の前の女に少なからず欲情してしまった。それがジャギだと分かっていながら。

「俺はアホか…」

頭を抱えて呟く。今更築き上げてきた関係を壊すつもりは無いし きっと寝ぼけてそうなったに違いない。そう、友人に向けてはいけない感情を押さえつけて アミバはベッドから出た。とりあえず 腹を空かせた居候を何とかしなければならない。
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