北斗

□語らぬ愛
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「兄さーん、起きてよ、朝ごはんだよー」

部屋のドアから顔をヒョコリと出し、次兄は長兄を呼ぶ。
いつもなら弟達が起こしに行くのだが、三男は友人の家にお泊まり、
末弟は遠征中。この家に居るのは長兄と次兄の二人だけだった。

「ラオウ兄さん、起きて」

今度はベッドまで近づいて呼んでみる。
相変わらず巨体の長兄は布団にくるまって寝息をたてている。
寝ている時まで眉間に深くシワを寄せている。
好奇心で、彼の短い髪を撫でてみた。
金の毛は柔らかく、少し癖がついてるのは宗家の血筋特有なのか。

「はぁ… ご飯冷めちゃうでしょ、起きなさい! 」

朝から大声を出したくはなかったが、これは仕方ないのだ。
鋭い次兄の声にピクッと反応し、長兄は眼を擦った。

「トキ…」
「また目覚まし時計壊したね…」

次兄が指をさした方向に、げんこつ一発で無惨に破壊された
目覚まし時計(のような物)が転がっている。

「す、すまぬ…」
「もう、今朝は二人とも居ないんですからね。さて、ご飯にしようか」
「うむ」

頷いて布団から出てきた長兄は、次兄の目線に気付いた。

「どうした、トキよ」
「いや、相変わらずでかいなぁって」

一般人とは明らかに筋肉の付き方が違う長兄の身体は、
彫刻のような肉体美だ。

「そうか…? カイオウ兄さんだってデカイじゃないか」

カイオウとは、離れて暮らす長兄・次兄の実兄である。
見た目は長兄と瓜二つ。

「それに、お前も十分デカイぞ」
「私は身長だけだよ」

言ってから咳き込む次兄。
長兄が怪訝そうに見つめると、

「大丈夫、まだ薬飲んでないだけだから」

そう言って笑ってみせた。

「先に食べてるから、兄さんも来てね」

次兄の言葉に、わかったとだけ言うと、次兄は部屋から出ていった。





「薬、飲んだか」
「飲みましたよ」
「…行ってくる」

薬の確認をしてくれるところに、
私の身体を心配してくれてるという彼の心遣いを感じる。
不器用な彼らしい心遣い。

「兄さん、いってらっしゃい」

玄関で見送ると、彼は振り向いて優しく微笑んでくれた。







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ラオトキは熟年夫婦ぽく。
言わなくても伝わる愛で。

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