第 2 章

□2-09 案内状
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ウキウキしながらカップの準備をしていると
いつの間にコッチへ来たのか
いきなり、クニに後ろから抱きしめられた

美桜「・・・っ!?」
危なっ!カップ落とすとこだったよ!?
美桜「え?ちょ・・・なに?どうしたの?」
クニがこんな風に抱きついてくるなんて珍しい

どうしたんだろう・・・、何かあった?

私の首元に顔を埋めながら、クニが溜息をもらすのが聞こえる
高野「・・・美桜の匂い、久しぶりだな」
確かに、ここしばらくはメールのやりとりが多かったな
ごく稀に電話で話す事もあったけど・・・

高野「たまには、美桜を補充しないと・・・」
そう溜息まじりに彼がつぶやく
でも、私を補充って・・・なに?

それにしても、クニがこんな風に甘えてくるなんて・・・
美桜(えっ!?あれ?
   甘え・・・てる…の???)
ふとよぎった考えに自分で驚いた

普段のクニは、何気に俺様なタイプ
余裕たっぷりな表情で、私の反応を愉しんでるフシがある


うわぁ!
考えてみたら、クニからこんな風に抱きしめられたコト…ないかも
そう思うと、何だかもう動けない
えっと、えっと・・・
ここは何か気のきいた事を・・・

と、そう思えば思うほど、頭は真っ白!
上手く思考が纏まらず、抱きしめられたまま何も言えない
何か言わないと・・・、ほら、何か無いの!? 私!

あぁ、けど・・・
クニがこんな風に甘えてくるなんてレアだし
恋愛モノのベタな展開みたいで、ちょっとキュンとくる

あぁ・・・、正直このまま浸っていたい

気分はもう恋愛モノのヒロイン
背景はきっとキラキラしてる・・・ハズ!

・・・なんて
そんな事を考えてたら、クスッと後ろで笑う気配

美桜(!?)
高野「なに固まってんだよ・・・ヘンな奴だな」
そう言って、抱きしめられてた腕が少し緩む

美桜「え?や、だって、クニが・・・っ」
腕が緩んだとは言っても、何となく身動きがとれない
高野「俺が?」
そう言いながら首筋にキスされ、微かに身体が震えた

高野「…何?」
チュッと音を立てながら、首筋に何度もキスしてくる
あぁもう・・・いつものクニだ!
ヒトをからかって愉しんでる気配をヒシヒシと感じるよ

高野「なぁ、コーヒー・・・冷めないか?」
反対側の首筋に唇を這わせながらクスクスと笑ってる
とっくにドリップの終わったコーヒーから、良い香りが立ち昇っていた

美桜「もう!誰のせいよ?」
高野「俺か?」
美桜「そうよ!」
スルリと腕が離され、振り返りながら少し怒ったフリ
そんな私の様子を、楽しそうにクニが見下ろす

クスクスと余裕たっぷりな笑みが憎らしい
けど、それはいつも通りのクニで、少しホッとする
さっきまでの甘い雰囲気が、少し名残惜しい気がした

美桜「もぅっ!」
気を取り直してコーヒーを注ごうと背を向けたけど
腕を掴まれてカップに注ぐことができない

高野「それ、後でも良いだろ?」
声質が低く変わり、その予感に少しゾクリとする
美桜「・・・・・」

後で私達が口にしたのは、完全に冷たくなったコーヒーだった

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