短編
□グラウンド
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仁王があたしを自身に引き寄せる。
あたしは仁王の胸に飛び込んだ。
頭と腰に仁王の腕が回ってる。
『にお…』
「しっ。ちゃんと最後まで言わせんしゃい」
『っ…』
目尻が濡れてきた。
喉の奥が熱い。
仁王の腕が力を増す。
「俺の彼女になってくんしゃい。…名前」
ダメだ。
耐えてたのに、全部流れ出てしまった。
「好きじゃ、名前」
『…ふ、ぶえ゛ーん!!』
「って、え!?」
あたしはとうとう声を上げて泣いてしまった。
しかも泣き声はかなり不細工。
「泣くほど嬉しかったんか?」
『だって…だってぇ…』
仁王が言ってくれたんだから、あたしも言わなきゃ。
『…あたし、ずっと仁王のこと見てた…。探して探して…一目見れたら1日幸せだったんだ…。だけど、仁王はあたしのこと知らないだろうし、ヘタレだから…告白も出来なくって…。あの日…財布を拾った時も、凄い感激したと同時に名前なんて、どうせ忘れられてるって思ってた…。』
自分で言いながら、なんて乙女なんだ、って思った。
『嬉しいよ…?今、凄く嬉しいし、幸せだし、感動してる…。…ありがとっ…仁王…』
仁王の腕の力が弱まったので、あたしは仁王の顔を真っ直ぐ見た。
同時に、自分の腕も仁王の背中に回す。
こんなことできる日が来るなんて、夢にも思わなかった。
正直、泣いたから顔はぐちゃぐちゃだけど、それでも、これだけはちゃんと仁王の顔を見て言わなきゃいけない。
『あたしも、ずっとあなたが好きでした。ぜひ、あなたの恋人にさせて下さい、にo「…雅治」えっ』
えー、なんで今の所邪魔しちゃうの、仁王。
「雅治」
仁王がもう一度呟く。
そこであたしは、初めて仁王の言いたいことがわかった。
『っ…、ぜひ、あなたの恋人にさせて下さい、ま、雅治…』
照れた。
いきなり、名前を呼ぶことを強要されるなんて。
それでも、あたしがそう言うと仁王…じゃなくて、雅治は、
「了解じゃ」
そう言ってあたしのおでこに1つキスを落とした。
えっ、死ねる程照れる!!
グラウンド
「(仁王、お前レモンの蜂蜜付けとかいいもん持ってんじゃん!)」
「(やめんしゃいブンちゃん、取んな!)」
「(どしたのこれ)」
「(彼女からの差し入れ)」
「(お前彼女できたのかよぃ!?)」
「(プリッ)」