短編
□グラウンド
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ふと、グラウンドを見てみた。
真っ暗で、何も見えない。
広くて、大きい、そんなグラウンド。
学校自体が暗いから、周りの民家やビルの明かりがすごく目立っている。
『グラウンドに出て見よっかな』
あたし一人がグラウンドにいるシチュエーションなんて、一生に一度あるかないかだ。
だだっ広くて暗い、そんなグラウンドを独り占めしてみたい。
あたしはそう思ってグラウンドに出た。
『…ほぉ』
海が近いので、星が多少は見える。
なんか、いいな。
『ふはっ!』
理由はないが、何となく笑ってしまう。
しばらく、ぐるぐると回りながら空を見ていた。
すると、なぜか突然仁王の事を思い出す。
『…ハァ〜…』
もう、マジでため息しか出ない。
あたしの恋はおそらく…いや、確実に叶わないだろう。
失恋決定。
乾いた笑みしか浮かばない。
むしろ失笑。
でもさ、見てるのがなんだか楽しいんだよね。
ストーカーとかじゃなくて、こっそり盗み見て、ちょっと嬉しくなったり、ノートに仁王の顔を落書きしたりと、そんな自分は乙女だな、とかあたしらしくないと、苦笑する。
青春っていうか、あたしも年相応の一面があるんだな、と思う。
…けれど、思いも告げられない。
会話もしない。
すれ違いどころかすれ違い以前のレベルの話だ。
溜め込みすぎたこの気持ち、吐き出したい。
言葉にして叫びたい。
よし、目の前に仁王はいないけど叫んじゃおう。
どうせ、周りは海とかで、周りに民家はないし、夜にこんな場所を出歩く人もいないだろう。
だったら、誰にも聞かれる心配はない。
あたしは、すうと空気を吸った。