短編
□好きだぜ"妹"よりも
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妹じゃないんです。
私はそれを朔さんに伝えたかった。
壱號艇に入って、結構な年月も経って、私だってそれなりに色々こなせる。
だけど、彼は私を"妹"扱いしかしてくれない。
「名前ー」
「はいっ」
「ほら、お土産だぞー」
「…い、いりません!」
「おっ、なんだ?反抗期か?」
「私、そんなもの!いりませんから!!」
だから、私。
これからそういう扱いされたとき、朔さんに冷たくあたって、もう"妹"あつかいできないようにしてやるんだ!!
私はその場をダッシュでさった。
朔さんが、絶対に振り向いてくれるように、頑張るんだ!!
私は、さっそくイヴァさんのところに向かうことにした。
「オ帰リメェ」
「こんにちは!羊さん!!イヴァさんいるかな?」
「イヴァなら平門の部屋にいるメェ」
「あっりがとー」
可愛い可愛い羊さんにお礼を言って、私はさっそく平門さんの部屋に向かった。
「平門さん、イヴァさん!こんにちは!」
ばんっと扉を開けると、イヴァさんとその部屋の主である平門さんがのんびりお茶を飲んでいた。
「あら、名前。どうしたの?」
「実はイヴァさんにお願いがあって」
私、大人になりたいんです。
そう言うと、イヴァさんは飲んでいた紅茶を吹き出して、平門さんは急に手で顔を覆った。
え、私なにかおかしなこと言ったかな?
「あ、あんた!何言って?!」
「大人になりたい!!」
「ああ、ななななっ」
イヴァさんは手をワナワナ震わせて私の肩をつかんだ。
と、そっとその上に平門さんの手が乗せられて。
「落ち着けイヴァ。名前、つまりお前が言いたいのはこういうことだろう?」
朔が"妹"扱いをする。
しかし、名前自身はそれが気に入らない。
だから、"妹"扱いされないような大人な女性になりたい。
そう、それだ!
平門さんの言っていることはきちんと的を射ていて。
「ああ、なんだそういうことか」
「うん!……で、どうすればいいかな?」
「別に、そんなものはイヴァの手を借りなくても出来ることだろう」
平門さんはそう言うと、どこかに電話をかけた。
すっごい楽しそう。
まるで、誰かに意地悪するみたいな…。
「平門、あんたってつくづく性格悪いわね」
「そうか?」
「ええ」
イヴァさんたちの会話の意味が分からずに、私は首をかしげていた。
まあ、ここに腰でもかけてなさい。
平門さんの好意に甘えて、私はソファに座ってくつろいでいた。
しばらく、イヴァさんと談笑していたら、平門さんが、
「そろそろか」
そう言って、私を抱きしめた。
「え、ひらと、さ―――」
と、それとほぼ同時に扉が開いた。
「…え?」
「時間ピッタリだ」
「平門、お前っ」
すこし息を切らしてたっていたのは、朔さん。
なんか、すっごく焦っている表情で。
「っ、何してたんだ?」
「え……と、お「お前には関係ないだろう?」」
私の言葉にかぶせて平門さんが、随分と楽しげな声で言った。
「…お前には聞いてねぇよ」
「……え、と…ひらとさ「名前、帰るぜ」ええっと?」
ずかずかと歩いてきて朔さんは平門さんに抱きしめられっぱなしの私の腕を引っ張ってそう言った。
なんか、険悪?
そう思いながらも、素直に従おうと思ったとき、ふと頭をよぎったのは、ここに来た理由だった。
「……いやです」
このまま"妹"扱いなんて、嫌だ!!
「なんでだよ」
「嫌なものは嫌なんです」
「……、」
「私は……あなたの"妹"でも、家族でもなんでもないですから!!」
知らない。
知らない。
朔さんなんて知らない。
あなたがどんな思いで私を見ていようと、私は。
「私は、"妹"じゃない、ですから……」
語尾がだんだん小さくなるのが自分でもわかって。
なんとなく、雰囲気を察したのか、平門さんは私を離してくれて、イヴァさんと2人でお外に出て行ってくれた。
「名前は、平門が好きなのか?」
「…え?」
「……だから、嫌だって言ったのか?」
「え、ちがっ……な、なんで伝わんないんですか?!」
"妹"にみられたくないって言っている時点でなんとなくきづいてるとおもってたのに!
あなたそんな鈍感じゃないでしょ?!
「…絶対、わかってますよね」
「なんのことだ?」
「……しらばっくれても、無駄ですから!」
ぷいとそっぽを向くと、後ろからぎゅっと抱きしめられた。
「…っ、」
「悪い、そんなおこんなって」
「…別に、おこってなんて」
「うん、怒ってんのは俺のほうだしな」
そう言って、耳元にキスを落とす。
ぞわり、と背中がした。
そのまま耳元で彼は口を開く。
「そういや、さっき平門に抱きしめられてたな」
「あ、あれはっ」
「俺のこと、拒絶したくせにな」
「だ、だって妹扱いされてるみたいでっ」
「妹?なんだそれ」
「って、ていうか、だいたい私のことなんとも思ってないくせに、そんなこと言わないでください!」
…は、
耳元で、気の抜けた声が聞こえた。
「……鈍いのはどっちだよ」
そう言って朔さんは、私の唇にキスをした。
って、
「なななん、なにしてっ?!」
「ここまで話しといて俺の気持ちに気づかねぇなんて、お前も相当な鈍感だぞ?」
「え、え?朔さんも、え?」
だんだん真っ赤になっていくのが、自分でもわかって。
妹扱いなんて、とっくの昔にしてなかったっての。
そう言って朔さんは私の顔に近づいて来て。
好きだぜ、"妹"よりも
(やっとくっついたか)
(ホント、見てるこっちがハラハラしちゃったわ)
(ひ、平門さん!イヴァさん!)
(余計なお世話だってーの)
((ラブラブなんで問題ないぜ))