短編
□ネクタイを解く手
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「ただいまー」
「おかえりなさいです!」
朔さんの部屋をお掃除中、彼が仕事から帰ってきた。
ひどく疲れた様子で、どっかりとソファーに座る。
お茶入れますね、と行こうと思ったら、彼がお茶はいいからこっちにこいと言うから彼のもとへと行く。
「どうかしましたか?」
「…いや、ただ」
お前を抱きしめたかった。
そう言って、彼はぎゅっと私に抱きついた。
ドキドキと心臓の音が彼に聞こえないか心配だった。
「つ、朔さんっ」
「ん?」
「ん?じゃないですから!離れてください!」
私はお掃除中なんです!
そう言って、私は彼の腕から抜け出して、もう一度ほうきを握り締める。
彼は、顔が真っ赤な私を知ってか、にっこにこと笑っていて。
朔さんはずるい!
なんて思いながら掃除を再開。
「…はあ、まったく……朔さんは」
ちらり、と盗み見た彼。
ちょうどネクタイを解いているところで。
綺麗な長い指が、するすると真っ赤なネクタイを解いていく。
それはとてもしなやかな動きで。
ネクタイを解く手
(―――っ?!)
(…お、どうした?名前顔真っ赤だぞー)
(な、なんでもないです!!)
((その動きがあまりにも綺麗だったから))